« 160m用ロングワイヤー(LW) 1 | メイン | 80mバンド用アンテナ整合器 »

2014年2月11日 (火)

FT-450 送信不能

<カテゴリ:FT-450>

中古で購入して、すでに4年経過していますが、先日、突然、送信できなくなりました。全バンド、全モードともアンテナ端子から出力が出ません。受信は全バンド、全モードOKです。マイコンやDSPがからんでいないようなので、自分で修理する事にしました。

ファイナルユニットへ送信信号を入力する同軸ケーブルのコネクターを引き抜き、オシロを当てても信号は見えません。IFユニットが怪しそうですので、配線図と、サービスマニュアルを頼りに、RF信号がどこで途切れているか、オシロのプローグを出力側から順に、当てていくと、Q2002のコレクタにはRF信号が有りませんが、ベース側にはRF信号が出ています。

テスターでこのQ2002の導通テストをすると、なんと全端子間がオープン状態。 完全に死んでいました。このトランジスタの品番は2SC5415EでUHF増幅用、SANYO製です。インターネットで探すと、すでに廃番で、2SC5415Aに変わったとの事。ここまでは、検索できましたが、通販情報が見つかりません。SANYOはONセミコンに吸収されたので、ONセミコン関連の情報を探すと、NE85634とコンパチである主旨の記事が見つかりました。 聞きなれない品番ですが、「NE85634」で検索をかけると、ルネサスの2SC3357と互換性があるという情報が出てきました。 この2SC3357というトランジスタはFT-450の他の場所で使っています。Q2020がそうでして、Q2020の出力をBPFを通した後、Q2002に送り、Q2002で増幅した後、ファイナルユニットへ送るという構成です。

Ft450_rfif_2 

この2SC3357なら沢山の販売店が通販しており、簡単に入手できます。 SPECを調べると、2SC5415のfTが6.7GHzなのに対して、2SC3357のfTは、6.5GHz。その他はほとんど一緒です。 まず間違いなく代替え可能なようです。

通販で手配した2SC3357が入手出来ましたので、壊れた2SC5415と交換しました。 結果、FT-450の送信機能はすべて正常に復帰しました。

Ft450q2002互換性があるのなら、わざわざ品番の違う物を使うより、統一した方がよさそうですが、量産設計の場合、1万台作っても全部良品で無くてはならず、修理のように1台限りが良品になったら良いと言う訳にはいきません。 多分、何かの理由により、品番を分けて量産したのでしょう。 そして、最終的に、同じトランジスタでも良かったとなったとしても、開発過程において、膨大な時間と人員をかけて、確認した品質評価をやり直す必要がある事から、2種類の品番を使い分ける状態になってしまったと推測します。

多分、メーカーは代替えをOKしないと思いますが、私が使うこのリグの場合、この現物だけがOKになれば良いですから、勝手に変える事にします。

壊れた原因ですが、以前、このトランジスターの近くにある+Bラインのタンタルコンデンサがリークするという故障がありました。その時の原因は雷の誘導雷でした。多分、この時の後遺症が出たのでしょう。

3か月もたたない内に、また送信不能になりました。こんどは、Q2002のベースに信号が有りません。 配線図と、サービスマニュアルから、信号を追いかけていくと、第1局発とのバランスミキサーまでは信号が出ていますが、その後のQ2022のベースに信号が見えません。

この間はコイルと抵抗コンデンサだけで半導体は無いのにと、オシロのプローブを各接続ポイントに当てていくと、信号が見えるところがありました。シメシメとその前後を再チェックすると、先ほどまで信号が見えなかったポイントでも信号が見えます。おかしいなあと思いながら、後段へチェックポイントを移していくと、今まで信号が無かったポイントにもちゃんと信号が出ています。結局、Q2002のベースまでは正常に信号が出ているでは有りませんか。

ただし、Q2002のコレクタには信号は有りません。トランジスタをテスターでチェックするとコレクタ、エミッタ間がショートしていました。 また、このトランジスタが壊れています。仕方なく、このトランジスタを交換しましたが、まだ出力は出ません。テスターで送信状態のDC電圧をチェックするとQ2002のエミッター電圧が異常に高い状態です。詳細を調べたところ、エミッター抵抗のR2009 10Ωが断線していました。この抵抗を良品に取り替えたら、故障は直ってしまいました。

今回の故障の原因は、まず、ひとつがチップ部品のハンダ付け不良が考えられます。オシロのプローブで抵抗の電極を押さえていくといつのまにか直ってしまったというのはこれくらいしか考えられません。 倍率10倍のルーペでチップ部品のハンダ付け部分をチェックし、怪しいと思われる所を再ハンダしました。 次にQ2002がショートし、R2009が断線した原因ですが、回路図や実装状態を見ても、C2006かC2010がショートして、また元に戻ったくらいしか思いつきません。 とりあえず、このふたつのコンデンサを手持ちの1608タイプのコンデンサに交換しました。 

これで、当分様子をみようと思っていましたら、今度は50メガのAMモードで送信出力がなかなか規定値に上昇しないという問題に遭遇しました。

モードをAMにしておき、スタンバイスイッチを送信にすると、送信モードにはなりますが、出力が5Wも有りません。そのまま送信状態を維持すると、約20秒かかって、規定の25Wになります。この現象は7メガでもありますが、7メガの場合、約7秒で規定出力になります。 ただし、7メガの場合、一度規定出力になった後、受信に戻し、再び送信すると、いきなり規定出力になりますが、50メガの場合、受信に戻し、再度送信状態にしても、また20秒くらいかかって出力が徐々に上昇するという症状です。 販売店経由でメーカーに修理依頼しましたが、DSP当たりがおかしいとのことで、基板ごと交換することになりました。 

この基板交換で、送信不能も再発しない事を願う事にします。

その後トラブルもなく長年6mバンド100W機として使ってきましたが、FTDX-101D導入に伴い、2023年6月に売却しました。

 

 INDEXに戻る