160m用ロングワイヤー(LW) 1
ペットボトルにコイルを巻いた6m高の超短縮ホイップアンテナは、国内QSOに限れば、そのサイズ以上の成果を出してくれましたが、DX交信には無理があるようです。 MMANAによるシュミレーションでは-15.6dBiくらいのゲインでしたので、100Wの送信でも、実際は3W分くらいしか輻射されていなかったのが最大の原因のようです。
せめて6000Kmくらいの距離まで交信できるようなアンテナをMMANAを使い検討していましたら、現用の7MHz用垂直ダイポールを接地型垂直アンテナにすれば、まだマイナスゲインですが、そこそこのゲインが得られる事が判りました。 ただ、現在の垂直ダイポールをそのまま使うと全長18mくらいしかない事と、ワイヤーの張り替えがかなり面倒です。そこで、7MHz用垂直ダイポールの上部エレメントをベランダの位置で切り離し、これに新たにワイヤーを継ぎ足し、例の金網のところまで、引き降ろし、この接地部分にローディングコイルとマッチングトランスを挿入した、ロングワイヤーなのかホイップなのか判らないようなアンテナで実験する事にしました。
ロングワイヤーの全長は25mくらいになり、ローディングコイルは1.9MHzで約22uHくらいになりました。この状態での給電インピーダンスをアンテナアナライザーで測定したところ、35Ωくらいでしたので、トランスで整合させることにしました。
トランスは、FT-240#43のコアに、ふた束の10本のより線を12回巻き、このふた束のコイルをパラ接続した上で、10組になったコイルをすべてシリーズに接続したもので、1.9MHzで計算通りのインピーダンス変換ができる事を確かめてあります。 巻線のサイズがAWG28でしたので、導体抵抗を小さくする目的でふた束のより線を使いましたが、 後日、インピーダンス変換トランスの実験をしましたら、コイルをパラレルで接続したトランスは広帯域性が改善される事が判りました。1組のコイルより2組のコイルを並列接続したトランスが、より正確なインピーダンス変換比を確保できるようなので、ひとり悦に入っていました。
このトランスの7個目のタップに同軸ケーブルを接続し、アンテナを6個目のタップに接続してやると、約37Ωへ変換出来ます。実際にSWRを測定すると、アンテナ共振周波数で、SWR1.05くらいになっていました。
ローディングコイルは、以前、アンテナチューナー検討用に作成したものを流用しました。 VU40の塩ビパイプに1mmの銅線を約0.8mmのスペースで45回巻いたもので、約45uHのインダクタンスとなっていました。 7MHzでのQは230、3.5MHzで137有りましたので、1.9MHzでも74以上は有ると思われます。 もし、Q=120のコイルならゲインが1dBくらい改善しますが、とりあえずの実験はこのQで我慢する事にしました。 このコイルのセンター付近に1ターンごとにタップを出し、ミノムシクリップでタップを選ぶ事により1.8MHzへの切り替えも行えるようにしてあります。
DX交信の前に、1.9MHzに調整して、国内QSOにトライです。 受信のS/Nは6m高の短縮ホイップより悪い感じですが、送信すると、相手の受信状態は、かなり良いようなレポートでした。 残念ながら、今回のLWと前回のホイップをスイッチで切り替えるという事はできず、簡単比較ができていませんが、飛びはかなり改善されたようです。 交信できた局は8エリアから6エリアまでカバーしました。 MMANAでのシュミレーションでは、-2.6dBiとなっていますので、6m高ホイップより13dBもゲインがアップした事になっているようです。
2014年CQ WW 160mコンテストに参加してみました。結果は、期待通りにはいきませんでした。コンディションにもよると思われますが、交信できた最長距離はサイパンとマニラの約2500Kmでした。ベトナムが599で入感していましたが、呼んでも全く反応なし。1KWの局もかなり手こずっていましたので、コンディションは良くなかったのでしょう。
6m高ホイップでは+20dB以上で入感する局と交信成立していましたが、このLWでは+10dB以上で入感する局とは交信できても、それ以下のSの場合、かすりもしないというのが実態でした。
この160m用アンテナを使用すると、40m用の垂直ダイポールが使えなくなり、夜、80mや40m、30mバンドで交信する事ができません。コンテストの時など、困りますので、上部エレメントを40m用垂直ダイポールの上部エレメントから17mバンド用のスカイドアループに変更しました。スカイドアループが同調フィーダー経由でMTUにつながっていますので、MTUから切り離し、この同調フィーダーの根本をショートした上で、160m用下部エレメントにつなぐ事にしました。 MMANAによるシュミレーションでは、ゲインが約1dB改善します。 実際に整合させると、給電インピーダンスは50Ωちょうどとなり、帯域幅も少し向上しました。
まだ、実践回数は少ないですが、2014年の広島WASコンテストで試したところ、国内QSOながら、CQを出して呼ばれる側を経験できました。また、これにより、80mバンドで垂直アンテナが使えるようになり、80mではカリフォルニアから呼ばれるというラッキーもありました。
垂直面指向性は一応DX向きの形をしているようです。
その後、このアンテナを数回使いましたが、送信機の出力でアンテナの共振周波数がずれるという問題に遭遇しました。スカイドア用ループを使った場合、1mW時の共振周波数と60W時の共振周波数の差が約30KHzくらいあります。7メガ用垂直ダイポールのエレメントを使った場合でも20KHzくらになります。 パワーでSWRが変わるで紹介の通り接近したエレメントどうしの干渉具合が出力で変わるようです。アンテナアナライザーで調整しても、実際の送信状態では、共振周波数がずれてしまう訳ですから、その内、調整作業が面倒になり、この方式のアンテナは使わなくなりました。 代わりに、独立したLWを臨時に展開して使う方法に変更しました。
160m用ロングワイヤー(LW) 2 に続く。