7MHz用逆Vアンテナ(国内用)
7メガ用逆Vアンテナと垂直ダイポールを比較しました。使用する目的により優越が異なります。両方設置したほうが良いという話です。
高さが十分に取れない為、下側のエレメントは折り返して設置した、かなりいい加減な7MHz用垂直ダイポールですが、給電方式を最適化するにつれ、打ち上げ角が下がり、国内QSOが非常にやりにくいアンテナになっていきました。と言って、すでに、7MHzで82、10MHzで100エンティティーもwork済みのこのアンテナを、元の状態に戻す気はありませんので、国内QSO用に打ち上げ角の高いアンテナが欲しくなってきました。 私の家は狭い敷地で7メガ用の水平ダイポールすら張れないところです。 そんな環境で給電点の高さが屋根より低く、家の壁に近接平行した逆Vアンテナなら、常設しない限り設置できそうです。MMANAでシュミレーションしながら、寸法を決め、国内コンテストのときだけ仮設する逆Vアンテナを使ってみました。
給電点の高さは7m。左右のエレメントは一方が8m、もう片方が12mのオフセット給電の逆Vで、両端は高さ1.8mくらいまで下ろしています。 長さがラフなのは、給電点のすぐ近くにMTUがあるので、適当で良いのです。
左が垂直ダイポール、右は逆Vの垂直面指向性シュミレーションデータです。
MMANAによるシュミレーションでは、 真上方向のゲインは、 垂直ダイポールが-12.5dBiで有るのに対して、逆Vは+5.3dBiとなりその差は18dB近くも有ります。 両方のアンテナをスイッチで切り替え比較すると、4エリアや5エリアの局はTS-850のSメーターで最大で20dBくらいの差がついて逆Vが有利です。1エリアはどちらに切り替えてもあまり変らず、7エリア以遠は垂直ダイポールが有利というシュミレーション通りの結果が得られます。ただし、近隣以遠の局では、コンディションにより状態が逆転することもあります。 また、逆Vによる受信信号は、垂直ダイポールよりS/Nが良く、昔から、垂直系はノイズが多いと言われる通りに聞こえます。 これは、打ち上げ角に関係しているのでしょう。 昔、衛星通信を行ったとき、衛星が天頂になるほど、ノイズが減ったのを思い出しました。
送信もこの受信の差と同等の差があるようで、パイルを受けている4エリアや5エリアの局を垂直ダイポールで呼ぶと、パイルも終わってCQを出していた事もありましたが、逆Vで呼ぶと、一発で応答があり、その差は歴然です。
このフルサイズの逆Vのインピーダンス整合の為、TタイプのMTUを使っていますが、Tタイプの一方のバリコンは890PFの固定コンデンサにして、限りなくL型に近くなるようにしました。TLWによるシュミレーションではMTU内のロスが1%以下に収まっています。
アンテナは通常、いかに打ち上げ角を下げるかがひとつのポイントになりますが、事、国内QSOに限れば、いかに打ち上げ角を高くして、かつゲインを高くするかが勝負となります。アンテナは高ければ高いほど良いという説は国内QSOには通用しませんでした。MMANAでシュミレーションすると、地上高をどんどん低くするに従い、真上へのゲインはどんどん上がっていきます。地上高1mでゲインは10dBiを越えます。しかし、同時にインピーダンスもどんどん下がっていきます。インピーダンスが下がると、整合回路や、エレメント自身によるロスも増えますので、どこかに最適地上高がありそうです。どうも1/8λ付近の高さが一番良さそうだというのはシュミレーションで判りましたが、実際に1/8λの高さに張ったダイポールは、それほどの効果は出してくれませんでした。(隣の空き地に臨時に仮設したもので、実験終了後撤去) 地面の電気的特性や周囲の建物などが影響してシュミレーション通りにはいかないみたいです。 こういう事が判ってくると、また、次のコンテストまでに、なにがしか改良出来ないかと、課題が出てきました。 同時に垂直系アンテナは、国内QSO向けではないという事もはっきりしました。未交信のJCCやJCGは中国、四国地方に集中しているのがアンテナの特性を物語っています。
良く、初心者向けに、マルチバンド対応GPなどの宣伝を見かけますが、少なくとも垂直に設置したGPは国内QSOには向かず、例え同じ短縮率でも、地上高の低い水平系のアンテナの方が国内QSOは楽しめそうです。小型マルチバンドGPでDX QSOも出来ますよ!と言うのは間違いで、DX QSOしか出来ませんョ、と言うのが正しいのかも知れません。 しかし、アンテナの短縮率以上に効率がダウンし、DXも聞こえないというのが実態ですが。
この逆Vは、もっぱら、国内コンテストだけに使用しておりますが、沖縄から北海道までの距離なら、これ1本でも十分ですね。 ただし、常設しない条件で、設置していますので、コンテストの始まる前に展開し、終わったら、さっさと片付けしまいます。設営に10分、撤去は15分です。
比較しました、垂直ダイポールについては、カテゴリ「マルチバンドアンテナシステム」の中で紹介しています。
コンテストに使う臨時逆Vは、7MHzだけでなく、3.5MHz用も用意しています。 このフルサイズ逆Vも、片方が12m、もう一方が27mのオフセット給電で、給電点の高さは7mしかありませんが、7MHz用垂直ダイポールを、アンテナチューナーで強制同調させた時と、臨時逆Vとの真上方向のゲイン差は、MMANAとTLWのシュミレーションによると約26dBの差があります。実際にTS-930SのSメーターで確認すると、国内の信号は30dBくらいのレベル差がついて逆Vが有利です。 しかし、逆Vでは、DX信号は全く聞こえません。
このフルサイズ逆Vにも上のようなパイ型MTUを使用しています。このMTUも限りなくL型に近づけましたので、MTUの内部ロスは1.2%以下です。
一方、7MHz用垂直ダイポールをMTUで3.5MHzに強制同調させた場合、最近、DX信号が聞こえるようになりました。そして、初めてヨーロッパとも交信できました。 他のバンド用の同軸ケーブルやMTU、ローテーターのコントロールケーブルを整理した結果、3.5MHzの打ち上げ角が下がったみたいです。 しかし、まだシュミレーション通りの打ち上げ角にならない原因がありそうです。
アンテナから垂直に引き下ろした、同軸ケーブルは地中を通ってリグにつながるというのが理想のようですね。 しかし私のアンテナは地上高8m付近を水平に伸びていますので、せっせとコモンモードフィルターを追加するくらいが唯一の改善策です。 その介もあってか、垂直ダイポールによるDXCCのエンティティは
3.5MHzで34、 7MHzで94、 10MHzで108
まで増えました。(2017年12月)
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国内QSOを存分に楽しみたいなら、最大地上高7mくらいの逆Vが一番というのが私の結論です。 2016年になってから、7MHzのAMを始めましたが、出力18WのAM送信機で運用する時は、朝から臨時逆Vを仮設して楽しんでいます。 AMの周波数は夜になると、放送局の側波帯による混信で使えなくなりますので、夕方には逆Vを撤去しています。
2020年9月
国内交信用として、ツェップアンテナを作りました。 このアンテナは架設がダイポールより楽ですがアンテナチューナーで好きなバンドに出る事は出来ません。