プリセット式MTU 2
9台のMTUをケースに収納するところまで出来ましたので、いよいよ、個々のMTUを目的の周波数で整合するように調整(プリセット)していきます。
プリセットは便利なアンテナアナライザーで行います。一番上が28MHz用で下に行くほど周波数が下がり、一番下は14MHzです。 28MHzから調整を始めますが、このバンドは最初に手作り試作して確認してありましたので、バリコンを回すだけで整合しました。しかし、24MHz以下、全てのバンドでバリコンの調整範囲を超えてしまい、コイルのタップ位置変更か、巻きなおしになってしまいました。また、構造的に上下のMTUに挟まれたMTUのコイルをいじる事ができませんので、それより下側にあるMTUは一度全部取り去り、コイルを交換なり、巻き数ダウンを行い整合可能になったら、次のMTUを取り付けて、また同じ作業を行うという繰り返しです。ここで、システム設計上の問題点が発覚しました。ベランダに置かれたMTUはリレーで選択切り変えられるのですが、その切り替えはシャック内にあるコントロールBOXからしか出来ないことです。ひとつのMTUの調整が終わると、シャックに戻り、ロータリーSWで次のMTUを選択しては、ベランダに戻り、調整を行うという作業は2日間もかかりました。
一通りの調整が出来て、実際に送信機から10Wくらいの出力で各バンドのSWRをチェックしていきます。アンテナアナライザーでSWR最小の周波数と送信状態でのSWR最小の周波数にズレが生じています。原因は、アナライザーを接続したとき、送信機までの同軸ケーブルをはずしていたので、アンテナとMTUが宙に浮いた状態になっていることでした。アナライザーで調整中でも同軸ケーブルのGND側は常にMTUにつながっているようにすると、この周波数のズレは無くなりました。
全バンド確認が出来ましたので、14MHzから順次、フルパワーでの動作テストです。 10Wから序々にパワーを上げていき30Wになったところで、SWRが無限大に。ベランダとシャックは8mくらい離れた別部屋なので様子が判らず、てっきりバリコンが絶縁破壊?かと調べてみると、配線に使ったリード線が異極に接触してビニール絶縁が黒こげになったり溶けていました。バリコンの耐圧には十分配慮したのに、配線はお粗末。
結局、全部のMTUを抜き取り絶縁距離が確保できるように線処理のやり直しです。バリコンが回転しても線がぶらぶらしないように、また、隙間の狭いところは同軸ケーブルの芯線で配線して絶縁距離を確保しました。
全てのMTUを再調整して、また14MHzからフルパワーテスト。18,21MHzと100Wフルパワーでも異常なし。9台のMTUのうち、6台までOKです。ところが、24MHz 50W出力でSWRメーターがフラフラと揺れます。ベランダに見にいくと一番下の14MHz用MTU当たりから白い煙が上がり、しかもバリバリと音がしています。
慌てて、シャックに戻り、送信を中止。 まだテストしていない28MHzはどうかと出力を上げると50WはOK。しかし、100Wで突然SWRが無限大になります。原因を調べねばなりません。 煙を出したのはどうもリレーみたいです。また、14MHzのMTU付近のリレーの部分は電圧腹となって一番高い電圧になっていた模様。MMANAでのシュミレーションでも24MHzは電圧給電に近い状態でしたので、MTUの接続ポイントの電圧が下がるように同調フィーダーの長さを変えることにしました。このフィーダーの長さ変更は逆に問題なかったバンドでの電圧上昇を伴います。24MHzと相反する状態になるのは18MHzと28MHzです。結局同調フィーダーを10cm刻みで切っていき全バンド100W送信OKの長さを求めることにしました。切りすぎてまた継ぎ足したりしてやっと長さを決定。当初の同調フィーダーの長さより2m長くなりましたが、一応完了。晴れて、全バンドフルパワーで使用出来るようになりました。
安心したのはほんの2~3日。21MHz以上のバンドでCW QSOをフルパワーで開始するとSWRが無限大になります。最初は100Wで発生しましたが、そのうち50Wでも発生するようになりました。 どうやら、リレーの内部で絶縁破壊が起こっているようです。使用していたリレーの電極とコイル間の耐電圧は1500VAC。 今まで実力でもっていたのが繰り返しの絶縁破壊で劣化してしまったようです。対策はリレーをより高耐圧のものに交換するしかありません。
秋月で5000V耐圧のリレーを購入し、全部のリレーを入れ替えると同時に、いちいちシャックに戻らなくてもバンド切り替え可能なSWを追加しました。 この作業は約2週間かかりましたが、構想開始してから、すでに4ヶ月、やっと全バンドフルパワー運用が出来る状態になりました。
このプリセット式MTUと従来の同調フィーダー給電方式とをリレーを使い、簡単に切り替えられるようになっています。少なくとも受信比較はすぐに出来ます。全バンドでSふたつ程ノイズが下がりました。28MHzでは受信信号のSも上がり、従来339くらいの信号が559まで改善しました。送信は簡単比較ができませんが、指向性がまともに効くようになったようで、アンテナが45度以上横を向いていると、コールしても取ってくれない事が多くなりました。正常に動作しだした証拠です。 RFのフィードバックも解消しました。今まで、14MHz以上のバンドではRFフィードバックでフルパワー運用が出来なかったTS-850Sも問題ありません。 QSYがマニュアルチューナー時より劇的に改善しました。ATUでもQSYの度にチューニング操作が必要でしたが、今は一切不要です。ロータリーSWをカチカチと切り替えるだけ。
課題もあります。MTUに経時変化があり、2日もすると、整合状態が狂ってしまいます。バリコンのバックラッシュで調整に難儀します。
雨が降ると、アンテナもMTUも湿度による影響を受け、整合状態が狂います。
Pre Set MTUの配線図をダウンロード
プリセット式MTU 3に続く