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2024年9月22日 (日)

Z-Match ATU 製作開始

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

Z-Matchチューナーに必要な高耐圧2連バリコンを実現する為、シングルバリコン2個をステッピングモーターで同期駆動するバリコン駆動機構が完成しましたので、これをATU化する為にケースインしました。

Zmatchatu_system1

モーター駆動バリコンに初期化位置検出用フォトセンサーを追加して、バリコン機構は完成です。 SWRを検出するCM結合器も追加しました。 今回、ケースとしてコメットのCAT-300のキャビネットをつかいますが、コイルがオリジナルのサイズではどうしても収納できなかったので、直径を57mmから47mmに変更しました。さらに高さを抑える為に銅線の中心ピッチを6mmから4mmに変更し、ほぼ同じ巻き数で同等のインダクタンスが得られるようにしました。このピッチを狭めた事により銅線間のショートの可能性が発生しますので、オリジナルではコイルサポートが2か所でしたが、これを4箇所に増やしました。 この絶縁材のサポーターは、100均の板厚3mmのまな板で作りましたので、銅線を通す穴径は2.2mmとして、前回より簡単に作成できました。 このケースの中には、2次コイルに直列に入るコイルと1.8MHz対応のコンデンサ追加の為のリレーはまだ実装しておりませんが、そのスペースは確保してあります。 ATUとして動作させるためのコントロール回路はこのケースの外側に小さな金属ケースを取り付けその中にマイコンを実装した基板を収納させます。 モーターを配置するスペースが無く、やむなくふたつのモーターを縦に重ねたところ、ケースの天板が当たります。 最終的には当たっているコネクターの向きが横になるようにモーターの取り付けを90度回転させ、リード線が隣のバリコンに当たらないように線処理するつもりです。また、モーターを固定するアングルもカットします。

Main Unit 配線図 zmatch_atu_main0.pdfをダウンロード

配線図はVCのモーター駆動に関する動作は確認済みです。 nEN端子にSWを設けたのは、頻発するプロググラム書き換え時、モーターが勝手に起動するのを防ぐ為、プログラム書き換え中、モーターをOFFする為です。

全ての配線が完了し、基板としての動作チェックを行った後、マイコンソフトの開発に取り掛かります。

ATUの開発も初期のバリコン式ATUから数えて4回目になりますので、結構ノウハウも溜まってきて、このATUのMainユニットには操作キーは1個もありません。 Mainユニットの基本ソフトができたら、すぐにコントローラーを作成し、全ての操作はコントローラーから行います。このため、UARTの通信速度は9600ボーに設定し、Mainユニット内の情報を出来るだけ早くコントローラーの表示器に表示する事を目標とします。 今までは、Mainユニットの中にプリセットコールが有効なBand分割を予めプログラムしていましたので、アンテナを実際にアップした時、周波数分割が実態と合わなくなる事がありました。 周波数変更してもSWRの変化が少ない場合、問題ありませんが、隣の周波数帯に移る前にSWRが1.5を超えるような場合、ATU本体を一度降ろして、周波数分割データを書き換える必要がありました。 今回のATUより、この周波数分割データをコントローラーから書き換える事が出来るようにします。 

ATUの実装状態として、このATUはベランダに置き、出力は平衡出力Onlyとします。 そして、実際のアンテナの給電点まではラダーラインで給電し、マスト上に括り付けたアンテナ切り替え器にて、ループや垂直、ロングワイヤーの選択が出来るようにします。 この構造により、マスト上のBOXはアンテナ切り替えのリレーだけとなり、風圧を軽減できます。 また、ATUのメンテも楽になります。

 

製作開始してから1週間、やっとメインユニットの基板が完成しました。

Zmatchpcb1_3

まだ、電源系統の確認が終わったばかりですが、以降実際にソフトを作成し、まずは各バリコンが予想通り動くかの確認になります。 すでに無負荷での動作確認は、前回の記事で紹介しておりますが、負荷がかかった状態で夏冬の環境でも動作出来る条件の確認が必要です。 それを実験出来るような恒温槽はありませんので、ある程度の余裕を見て、最低電流の値を決定する事になります。 このへんは決まった計算式がある訳でもありませんので、かなりいい加減なあてずっぽで決めます。

とりあえず、ふたつのモーターが動作するようになりましたので、2連VC側のモーターが正常に動作する最小電流を調べてみました。75mAで誤動作が起こります。100mA、室温26℃では異常なしでした。 余裕をみて、250mAで電流制限をかける事にしました。 シングルVC側も250mAに設定しました。 以降、この状態で運転し、不都合があれば都度最適値に修正する事にします。

次に、電源投入したら最初にモーターの起点を初期設定します。 やり方はバリコンの位置がマイコン上から不明の状態ですので、まず、正回転(容量が抜ける方向CW)へ360度回転させ、フォトセンサーがOFFからONになる所見つけて一旦停止した後、同じ方向に25度だけ回転させ、次に逆回転(CCW)させ、フォトセンサーが容量最大位置でONになるのを検出したら、その位置で停止し、この位置をゼロとし、180度の位置(容量最小位置)を500と定義します。 このイニシャル動作時、モーターは1.8度ステップ、200Hzのクロックで回転します。 この200Hzはマイコンの中のクロックの事で、モーターのパルス周期(PPS)はこの半分の100PPSとなります。 このイニシャル動作の最初の回転の時は、バリコンの現在位置が全く判りませんので、360度回転させ、VC最大容量付近で停止させ、そこから、本当のゼロ番地を探しにいくのですが、何回もテストしていると、容量最大では無く容量最小位置に止まる事が頻発しました。 ソフトの作りが悪いのかと1週間近くああでもないこうでもないとやったのですがうまくいきません。 とうとうハードの部分まで疑いデジタルオシロをつないで、フォトセンサーの出力をモニターすると、ONの時は問題ないのですが、OFFのとき、電源電圧をフルスィングするほどのリンギングが出ており、このリンギングのバラツキで誤動作する事が判りました。対策は、コレクタ抵抗を12Kから120Kに変更し、かつコレクタとGND間に0.1uFのコンデンサを追加する事で解決しました。 しかし、このコンデンサを0.047uFまで小さくしたり、0.22uFまで大きくすると即誤動作しますので、最終的には温度変化を含めてカットアンドトライが必要になるかも知れません。(配線図は修正済み)

この最初のモーター回転時、数100msec後に一旦モーターが停止し、またすぐに回転を始めますが、この時間がランダムで変化し、時には一時停止しない事もあります。 原因が判らないので、ダミーで45度くらい回転させた後、VCの容量最大位置を探すようにしました。 また、この容量最大位置を探す時は逆方向(CCW)で行うとイニシャライズ時間が短くなる事が判りましたので、モーター回転方向も変更しました。

次に、ラストデータとして記憶されているふたつのVC位置を読み出し、その位置にVCをプリセットして、初期設定完了です。 このプリセット時は通常回転ステップとなる1.8度の1/4(0.45度)、400Hzのクロック(200PPS)で動作します。 180度の位置は2000ステップ目となります。 バリコンの回転速度は、前回作成したT型ATUのVC回転速度と同じくらいです。 しかし、何回もテストを行うと、正転と逆転の時のバリコンの回転角度が一致しません。 脱調と呼ばれる現象らしいのですが、その原因はモーター電流や、ステッピング周期に関係があり、かつモーター自身の個性とドライバーのアンマッチなど調べれば調べるほど心配ごとが出てきます。 今回の脱調の原因は電流ではなく、ステップ周期でした。400Hzクロックのとき脱調が起こり、200Hzでは起こりません。しかし、200Hzで1/4マイクロステップでは時間がかかり過ぎます。 モーターの仕様書では無負荷状態で、最大起動レートは1000PPS以上となっていますが、負荷をかけた場合どのくらいになるかは判りません。 これは実際の負荷で限界値を調べるしかなさそうです。 今後さらに脱調対策を進めていきます。 ここで台形駆動という方式について勉強しました。 高速でモーターを回転させたいときは100ppsくらいでスタートし、徐々に回転数を上げ、最高速度で一定期間回転させた後、目的の角度に近づいたら逆に徐々に速度を落とし、100ppsまで落として停止させるのだそうですが、それをC言語で組んでトライする事4日間。やっと最高速度400ppsまで実現できました。 

この1/4ステップで400pps駆動中の騒音は1.8度基本ステップで駆動中の騒音に比べ、大変静かです。 そこで、電源投入直後のイニシャライズも1/4マイクロステップで実行してみました。 方法は、VCの容量最大位置を検出し停止したら、この位置を仮の原点として、CW方向に100ステップ(VC角度で9度)回転させた後、1.8度ステップでCCW方向に回転させ、停止した位置を真の原点とします。 このやり方の場合、騒音がうるさいのは真の原点を見つける時の9度の回転だけですから、大幅な静音化が実現できました。 しかし、この動作は電源OFFの期間が3分以上あるときだけで、数秒から3分以内のOFF時間では、最初の1/4マイクロステップ動作がうまくいかず1.8度ステップで回転する時間が長くなります。 原因は電源回路に2200uFの電界コンデンサが2個挿入されており、電源OFF時この電解コンデンサの放電が遅く、モータードライバーがリセットされないことのようです。 ICの説明ではSTANBY端子をLOWからHIGHにした時RESETされると書いてありますが、RESETされるのは一部のみで、IC全体がRESETされるのではないようです。 対策として、なるべく早く放電するように電界コンデンサの両端に1.5KΩの抵抗をパラ付けしました。 この結果、電源OFF後、5秒以上経つとICがRESETされるようになり、正常にイニシャル動作を行います。

ATUとしての組み立て、配線が完了しました。 いざ、天板を取り付けようとしたら、フォトセンサー用の遮蔽板も天板に当たります。 これが判った時点で、天板を取り付けるのは一時諦めたのですが、前述したモーターのコネクタの高さ変更が一応できましたので、プーリーの径を小さくして天板がかぶるように検討するつもりです。

マイコン基板の中に、12Vから6Vを作るDCDCコンバーターをマウントした為、この基板を収納する金属ケースの蓋も取り付けられません。 これより小さなサイズのDCDCコンバーターは沢山あるのですが、スィッチング周波数50KHzというコンバーターはこれしか無かったので、やむなしです。 小型のDCDCコンバーターのスィッチング周波数はMHz帯のものが多く、アンテナのそばに置く事が出来ません。 リレー式ATUやバリコン式ATUの基板はオープン状態でも問題なかったので、とりあえずこのまま行きます。 多分シールドは不要と思われます。

Zmatchpcb2

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Zmatchatu_system4

Zmatchdcdc2

ステッピングモーターのドライバー回路はモーター停止中もPWM制御による電流制限回路が動作し、ノイズを発生させます。ATUという装置はアンテナ直下もしくはアンテナの一部に組み込まれるものであり、ノイズの発生は厳禁です。 現在、DCDCコンバーターのサイズが大きすぎてドライバー回路を収納している金属ケースの蓋が閉める事が出来ません。 これが原因で受信時に問題が生じてもこまりますので、ノイズの少ない小さなDCDC電源を再度探す事にします。 すると、アマゾンで65KHzスイッチングのDCDCコンバーターが見つかりました。 6個まとめて690円くらいで出ていましたので、これを手に入れ上の写真のように交換しました。 HF帯へのノイズはまだ確認できていませんが、多分OK?。また、バリコンの金属軸とつまみを絶縁する為に、バリコンのシャフトはプラスチックの丸棒を継ぎ足してありましたので、これにプーリーを取り付け、タイミングベルトを張ると、ベルトの張力でプラスチックの軸が曲がってしまいました。 対策として、軸の先端の位置を固定するプラスチックの板を取り付けました。

ATUの配線は完了したので、モータープーリーを指で回し整合テストをやってみました。一応3.5MHzから29MHzまで10Ωから200Ωまでの純抵抗負荷に整合させる事はできました。 2連のバリコンはかなりクリチカルで、1度くらいの角度でSWR1から3くらいまで大きく変化します。 一応設計上は0.09度ステップでバリコンは回転しますが、ベルトにバックラッシュがありますので、それがどのくらいになるかは判りません。 この課題は、早くコントローラーとメインユニットのプログラムを完成させ、確認するしか有りません。

10月の下旬に差し掛かりましたが暑い日が続いています。 ATUのバリコンをコントローラーからリモート操作する事が出来るようになりました。 アンテナ端子に50Ωのダミー抵抗を繋ぎ、アンテナアナライザーでATUの整合テストをマニュアルで行ってみました。 キーのチョン押で10ステップ変化するようにソフトは組んであります。1.8MHzや7MHzは全く問題有りません。なんなくSWR1.01程度まで合わせ込みが出来ますが、29MHzではチョン押しでSWR最小ポイントを飛び越えてしまいます。4ステップくらいがちょうど良さそうです。

以後、ひとつの機能を追加する度にATUユニットとコントローラーを交互に開発しながら進める事にします。 コントローラーの設計と製作は次のページにあります。 

 

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