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2022年1月23日 (日)

160m SSB 200W リニアアンプ

カテゴリ<SDR> <RFパワーアンプ(リニアアンプ>  [1.8MHz  自作]

160mバンド用のQRP SSB送信機の基本機能が完成しましたので、次は、160mバンド用200Wリニアアンプの製作です。 製作と言っても、すでに完成状態にある40mバンド用200Wリニアアンプに1.8MHzのLPFを追加し、2バンド仕様に改造するものです。

回路図は以下のようになります。

40m160m_200w_amp

40m160m_lpf

いままでの40mバンド用LPFに160mバンドのLPFを追加し、これをリレーで選択します。

Lpf2mhz_200w

左のデータがこの160mバンド用LPFの単体特性です。 使用したカーボニルコアはT68-2で、1mmφ UEWを約30回巻いて、必要なインダクタになるように巻き数を調整しました。  一応アンプ部は広帯域設計ですので、160mバンドもまともに動作してくれるはずです。

この追加改造は終わりましたので、TS-930を信号源として、動作確認を行いました。 

 

その結果、1.85MHzでのリニアリティが全く取れません。 リニアリティが取れない最大の原因は、過去の例から、T2のインダクタンス不足とアンバランスが考えられますので、バイファイラ巻きのトランスT2を巻きなおし、なおかつ、コイルの極性も吟味した結果以下のようになりました。

160m_200w_data

左が、7MHzのリニアアンプの仕様のまま、LPFのみ2MHz用に切り替えた入出力特性です。130Wを過ぎたあたりから、リニアリティが悪くなっています。 

真ん中は、T2の巻線を従来の3.5Tから7.5Tに変更したもので、180Wくらいまではリニアリティを確保出来ています。 そして、200W出力時の入力は3.4Wくらいです。実際の1.85MHzの送信機の最大出力は3.3Wくらいに留めて置く事にします。

右端は、T2を変更した後の7MHzのデータでリニアリティは前回と同じくらいですが、ゲインと最大出力が少し落ち、5W入力でやっと200Wでています。 この原因は伝送線路トランスのインダクタを増やした事により生じたもので、伝送線路トランスの最適インダクタンスが7MHzと1.8MHzとは異なるようです。 その後、色々調整などを行った結果、7MHzも1.8MHzもゲインが下がり、7MHzではCWで7W入力で、1.8MHzは同じくCWにて5Wの入力で200W出る状態で落ち着いています。

この状態で、高調波レベルを確認してみました。 第2高調波が-44dBくらいしか取れません。 T2のバランスが崩れているかもと、巻線を1.5D2Vに代えてみましたが、芯線と外皮のDC抵抗の差により、かえって悪くなる始末。 念の為とT3のインダクタンスをチェックすると41uHくらいです。1.8MHzでは460Ωくらいのインピーダンスで、実際のインピーダンス50Ωに対して9倍です。 そこで、このインダクタンスを90uHくらいまで増やしてみましたが、高調波のレベルは変わらず、出力のみが落ちていきます。 従い、T3は現状のままとしました。 さらに、T2のバイファイラ巻線はバラツキが大きい為、2本のワイヤーを撚ったものではなく、AWG24ですが、平行コードに変更すると、若干の改善は見られましたが、ケーブルのDC抵抗により7MHzで180Wくらいしか出なくなりました。 T2の巻線を0.50SQに戻し、2本のワイヤーのより密度を1.5倍くらいにし、ターン数は7.5Tにもどすと、7MHzでも200Wをクリアし、やっと-50dBくらいになりました。

この検討の途中でT3がDC直結になっているのが問題かもと考え、0.1uFのコンデンサでDCカットをしてみましたが、第2高調波のレベルは全く変わりませんでした。 実はこの検討のさなかに、操作ミスや不注意によるFET破壊が2回もあり、現在はebayで手配したU$2.20の中華製偽ブランド品の2SK1530を使っていますが、この偽ブランド品は正規品の東芝製より特性が良いという情報がインターネット上に有りました。 そこで、改めて、高調波歪が最小となるアイドル電流を調整すると、なんと、100W出力時、第2高調波が10dBくらい下がるポイントがあります。 しかも、7MHzと1.8MHzでの高調波最小ポイントは一致しています。

結局、第2高調波が多いのは、東芝製に比べて、バイアス電流を少し少なくする事で解決する事が出来ました。

以下の写真は160mバンドを追加した最終状態です。

2band_riner_00

1r8mhz_200w

左のスペアナデータは、1.8MHzにて200W送信時の高調波データです。

第2高調波が-55dB程度で一番大きくなっていますが、新スプリアス規制に対して合格ラインです。

 

2Band化した配線図です。  

160m_PWR-AMP200W_2.pdfをダウンロード

 

 

次に気にしていたIMDの確認です。 700Hzと2300Hzの2-tone信号によります。

160m100pep

160m200pep


Imd_100w_005

Imd_200w_006

左上が100Wpep時、右上が200Wpep時の2-tone波形と3rd IMDです。 100Wpepで-29dBc程度、200Wpepで-23dBc程度。決して良くはありませんが、許容できる限界でしょう。 

200w時のIMDが悪いのは明らかにリニアリティ不足であり、まともに200Wが出力されていない事が原因です。 周波数が低くなればIMDも良くなるのかと思っていましたが、どうもそうではないようですね。 この問題は、少し時間をかけて解決策をさぐろうと思います。
 

160m SSB 送信機 ケースイン へ続く

 

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2022年1月10日 (月)

160m SSB送信機 QRP パワーアンプ

カテゴリ<SDR> [1.8MHz  自作  dsPIC]

1.8MHz用SSB送信機から出力が得られるようになりましたので、これで200Wリニアアンプをドライブできる出力、約5Wが得られるQRPリニアアンプの製作です。

リニアアンプの製作にかかる前に2MHzのLPFを作ります。

2mhzlpfschema

2mhzlpfshumiratiton

インターネット上の計算で求めた2MHz LPFの各定数が左上の回路図です。 その時のシュミレーションデータが右上になります。 

1.9MHzまでフラットで、第2高調波となる3.6MHz付近で,-35dBくらいの7次LPFとしては一般的な特性です。

Im2mhz_lpf_2

Lpf2mhzdata

そして、実際に作られたLPFが上の写真で、その実測データが左の特性になります。

計算のままの定数で作ると、1.8MHz当たりで-2dBくらいになりますので、C2の2660Pを2100Pに変更してあります。 実物の写真でもC2を作る560Pのコンデンサのリードを半田付けせず宙に浮いているのが判ると思います。

この修正を行っても第2高調波付近の減衰は-35dBくらいを確保できていますので、このLPFで進行します。

使用しましたカーボニルコアはT50-2で、0.5UEWを約30回巻いて5uHをめざしましたが、ぴったり5uHになっていません。 また、7uHも実際は7.14uHになっていましたので、計算通りにはいかないようです。 LPFの各シールド壁を貫通する貫通コンデンサは100Pのものですので、それを加算してあります。

コイルのインダクタンスはこれで計測しました。

160mpwramp_sch

160m_5w_ampunit

そして、上の回路図が、5W QRP AMPの構想レベルです。

下の写真がそれを実際に組んだ状態です。

終段は7MHzと同じ、2SK2796Lのプッシュプルで、そのドライバーは手持ちの関係で2SK2382です。 当初ドライバーをトランジスターで検討したのですが、入力インピーダンスが低すぎて、前段のリニアリティが確保しにくい状態でしたので、ジャンク箱の中で眠っていたスィッチング用高出力のFETを使用する事にしました。  このFETはモールドパックの外観をしており、放熱板にビス止めし、無信号時の発熱を防止すると共に、ソースに0.33Ωの抵抗を挿入し、かつダイオードによる熱補正もかけて安定化を図っています。

次にファイナルにダミー抵抗を接続し、特性の確認をおこないました。 結果はNGでした。 最大出力は10Wくらいは得えられますが、とにかくリニアリティがものすごく悪い。 2トーン信号を加えて波形を見ていると、2Wくらいまではなんとか見られる波形をしていますが、それを超えたとたん波形がゆがんできます。 波形が左右で歪むので、原因はフェライトコアと思われます。

調査した結果、ドライバー段のトランスが原因でした。 このトランスのコアは、7MHzと同じものでしたが、今回のドライバーのFETは電流が多くなっている事に加えて、周波数が低いからと、7MHzのとき1次側が2Tであったものを4Tに替えた事が原因で、コアが磁気飽和したものでした。 そこで、磁気飽和がおこりにくくするため、コアサイズをツーランクアップしTDKのHF70BB9.5x10.4x4.9という品番の変更し、巻き数も2Tにもどしました。 しかし、2Tに戻した事により1.8MHzでのロスが生じますので、2次を4Tにするのではなく、6Tとし、かつ全巻線をバイファイラ巻きとしました。 これらの変更を行った結果2W以上でも歪は発生しなくなりましたが、10Wで歪始める状況でしたので、L3のコアをESD-R-28C-1に変更しました。 また、T4のコアは予定通りESD-R-18SDのままですが、1次側を4T、2次側8Tとしたバイファイラ巻きにした結果、クリップ開始は12Wくらいになり、最大出力は16Wとなりました。

160mpwramp2_sch

上の配線図がこれらの変更を加えた最終状態です。 その最終実装状態は下のようになりました。

10wampwtlpf

5wpep

10wpep


左上の波形が5Wpep、右上が10Wpepの波形で、一応まともな波形をしています。 実際に動作するのはMAX5Wの状態です。

5wpwroutwide

左は5W出力時の広帯域スプリアスデータです。 基本波の前後、百数十KHzの範囲にスプリアスが見えますが、問題ないレベルです。 また、高調波は完全に無視できます。

10Wの時も測定していますが、同じ状態でした。

ただ、リニアリティは、前回の7MHz用10Wアンプに比べ、良くありません。

5Wpepのとき、3次IMDが-28dBくらいでした。 このままでは、SDRの名が廃れますので、ON AIRする訳にはいきません。 

 

 

Imd5wpep_3

詳細調べたところ、ドライバーFETの入力インピーダンスがまだかなり低く、その前の2SC2712のアンプで歪んでいることがわかりました。 そこで、パワーアンプの前にマッチングトランスを置いて、インピーダンスマッチングを行った結果、ドライバー段入力部で3次IMDが-37dBとなりました。 しかし、7MHzアンプでは、この段のIMDは-50dBくらいありました。 そして、5Wpep出力時のIMDは左のデータのごとく-28dBしか有りません。 まず、ミキサーに問題がありそうです。 さらに、ドライバーFETに問題があると考え、手持ちの他のFETやトランジスターに変更してみましたが、どの条件でもあまり変化が無い事が判りました。 ただ、7MHzの時と同じようにドライバーをRF電力増幅用の素子に変えると若干の改善がみられます。 終段の2SK2796Lは7MHzのアンプで実績がありましたので、疑っていなかったのですが、試しに、片方のアイドリング電流を変化させると、IMDのデータが変わります。 どうも、7MHzのアンプは、たまたま特性のそろったFETを使用した為、すんなり好成績がえられましたが、プッシュプルで使用するFETの特性をペアでそろえる必要があるみたいです。 

160mimd

 

そこで、全回路を再点検する事にしました。 DSPの出力をOP-AMPでバッファリングしていますが、このアンプの出力ポイントでの3次IMDは、-60dB以上ありました。 従い、ミキサーに問題があるようです。 前回の7MHzミキサーと異なる部分がありますので、定数を7MHzミキサーに合わせました。 R49は7MHz版には無かったのですが、効果がありそうという事で、追加しました。 その結果、Q4の出力ポイントでの3次IMDは-44dBくらいまで改善しました。 

Pwramp02

Imd5wpep


次に、ドライバーのFETはCB用のトランジスター2SC2078に変更しました。 入力インピーダンスが下がりますが、 トランスを追加しましたので、問題なく動作します。 トランジスターにした事により、出力インピーダンスが変わりましたので、T3の巻き数比を2:6から2:4に変えました。 そして、ファイナルのアイドリング電流をIMDがベストになるように調整した結果、5Wpep時の3次IMDが-35dB、5次IMDが-40dBまで改善できました。
7MHzのようにはいきませんでしたが、一応納得できるレベルです。

  

 

 H3e100pct_2

気にしていました、H3Eの変調波形を確認してみました。 左の波形が100%変調のAMから片側のサイドバンドを削除した状態です。

この波形をエンベロープ検波すると、歪だらけになると思われ、実際に音楽を変調してTS-850にて聞いてみると、歪だらけの音でした。 しかし、音声だけならあまり気にならなく、SSBの時より了解度はアップします。 多分、歪んだ高調波のおかげで、サシスセソの音がはっきり聞こえる為に生じる現象と思われますので、キャリアレベルはSSBの最大振幅の半分(電力では1/4)に設定し、もし、QSOの相手局より歪が多いですと言われたら、H3Eであると言い訳する事にします。

 

これまでの全ての変更を網羅した配線図 160m_tx_4.pdfをダウンロード

 

次は200Wリニアアンプの検討になります。

 


160m SSB 200W リニアアンプ へ続く。
 

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