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2019年4月28日 (日)

50MHz AMトランシーバー(組み立て2)

カテゴリー<6m AM >

送信機各段の発振やPLL VFOへの出力の回り込みなどの問題で、回路ブロックの再構築をやらざるを得ない状態であった、50Mhz PWM方式トランシーバーですが、PLL VFOを隔離状態にシールドし、受信部、電源部をそれぞれ独立させた構造に作り替える事にしました。 これを美しく仕上げる為に、アルミ板の折り曲げ機(ベンダー)を作るところから再スタートです。 アルミベダーは、このトランシーバーを作成始める時点で、製作したのですが、アルミを鋭角に曲げられず、どうしてもRが大きくなってしまい、前回の写真でも判るように、折り曲げ部が凸凹になっていました。 トランシーバーのブロック構造を変更するに際し、このアルミベンダーも再設計し、うまくいきましたので、やっと本来のトランシーバー製作に戻る事ができました。

6mrx0428top_2

6mrx0428back

上の写真は新しく作り直した、PLL VFO、受信機、電源の各ブロックで、特にPLL VFOは完全シールド状態にしてあります。 下の写真は、その裏側です。 完成状態では、この裏側にケースによりフタがかぶせられます。 一応この状態で、受信機は完動状態、送信機はVFO出力 OKのレベルです。 

Bafferout

Tx190430x2buffer_2

 前作の50MHz送信機用に作成したVFOから2逓倍回路を取り出し、これを単体でシールドし、バッファーアンプとしました。その出力端子のスペクトルです。 基本波の25MHzと75MHzがまだ残っていますが、終段までに-60dB以下にできそうです。 

2倍も3倍高調波もバッファアンプ終段のエミフォロの歪が原因ですので、問題は有りません。

ここまでが、受信部ブロックで、このバッファの出力を送信機ブロックに接続すれば、送信部の完成となります。

前回はこの検討の最中に異常発振が起こりましたので、 一応対策済みですが、気にしながら後段の動作確認を行います。

Tx190429bpf200m_2

Tx190429bpf2m_2

 左上が、200MHzまでにスプリアス、右上が、PWMサブキャリアの漏れをみた2MHzスパンのスプリアスです。 いずれも-60dBのスペックをクリアーしています。

Tx190429modsin

最終的な無変調時のキャリア出力は8Wでした。 事前検討のときVCC6.5Vで10W出力としましたが、いざ変調器を接続し、PWM LPFを通過した後の無変調時の終段に加わるVCCが5.7Vしかなく、8Wの出力は、ほぼ計算通りですので、目標の10Wには不足しますが、とりあえずこれで良しとします。 

また、予備検討時はきれいな正弦波による100%近くの変調が出来ていましたが、各段のゲインを発振しない状態に再調整した結果、左のようにかなり歪んだ変調波形となってしまいました。 ファイナルとドライバー段にPWMによる変調を同時に加えた場合、歪の少ない変調をかける事は非常に困難で、結果は出来高勝負という状態です。 ここは、やはりセオリー通り、終段だけに変調をかけ、入力から出力へスルーするキャリアをいかに減らすかかが、正しい、対策でしょうが、とりあえずは変調度は高いけど歪だらけという状態で一旦置く事にします。

理由はEスポのようにQSBが激しい状態では、了解度確保する上で変調度は重要です。 ただし、ローカルラグチューでは、例え変調が浅くても、歪の少ない信号が聞きやすいですから、余裕が出来たら検討する事にします。

Tx190429all

Tx190429lcd

Tx190430_anmeter_4

 

Line_filter_rx

全体を結合し、ケースの中に収めました。 ここで、問題点が発覚。 受信アンテナ端子へ、ファイナルのアンテナ切り替えリレーから、受信機用の同軸ケーブルをつないだ状態で送信テストをすると、LCDがチラチラとノイズ交じりでふらつきます。 終段の高周波がマイコンに混入し、誤動作しているようです。 ためしに、送信部と受信部の電源を分けるとこの現象が出なくなります。 結局、最初のアイデア通り、受信部にも専用の電源ラインフィルターを追加すると共に、受信部と送信部のグランドシャーシを機械的に接続する事で解決しました。 左上の写真がスピーカーのマグネットの裏に追加したLINEフィルターです。

8W出力時の消費電流は約3.2Aで、変調がかかると、プラス方向に振れます。 音楽を変調しながら、ダミー抵抗へ出力する2時間エージングも終了し、後はEスポの発生を待つだけとなりました。

PLL VFOの配線図 6mTRX_DDS_PLL-VFO3.pdfをダウンロード

受信部、BFO配線図 6mAMTRX_BFO3.pdfをダウンロード

送信部、変調部配線図 6mamtrx_txmodunit3.pdfをダウンロード

Eスポが発生しない為、このトランシーバーを持って、野呂山に行ってきました。 FT991によるSSBでのQSOは3局ほど出来ましたが、このAM機ではゼロでした。 山の上は雑音が少なく、FT991ではS1でもQRK5なのですが、このトランシーバーの受信雑音はいつもS7くらいです。 これでは、相手がコールしてきても交信成立しない可能性が大です。 

帰ってから、このノイズ対策です。 ノイズ発生源はマイコンとLCD、DDSやDSPの通信と思われますので、現在、メインループが回るごとに通信を行っている機能を、ひとつづつ止めてみました。 全て止めると、きれいにノイズがなくなり、S1の状態です。 ただし、Sメーターのデータ読み出しと、そのレベル表示は止められないので、この機能のみを動作させると、聴感で少しノイズの増加がありますが、Sメーターが振れるほどにはなりません。  よって最低このSメーター読み出しと、この駆動のみを残し、情報に変化がない場合、LCDを含めDDSともDSPとも通信をしないようにソフトを変更しました。 操作があると、そのたびにノイズが出ますが、操作しなければS1で問題なしとなりました。 このように原因解析できると、音量ボリュームと、そのレベル表示も、ひとつのノイズ源になっていますので、アナログ部分に可変抵抗器を設けてやれば、DSPとマイコンでやる必要は無くなります。 いつか、アナログの音量調整に変更し、DSPは音量固定にする事にしますが、当分はこのままです。 

完全に対策したはずですが、特定の周波数でノイズが大きくなります。 

その原因が判ってきました。 Sメーターが大きく振れるような外来ノイズと、受信感度のムラにより感度の高い周波数が一致すると、大きなノイズが発生しますが、ノイズが発生した事によりまた、Sメーターのレベルが上がり、そのノイズでさらに大きなノイズが発生し、これが極限まで行くとAGCの為、一度感度がダウンします。 感度がダウンして静かになると、すぐにゲイン最大に移行しますので、これに伴いSメーターも変化し、同じ事を繰り返すみたいです。 そこで、Sメーターの駆動を少し遅らせてみなした。 すると、この特定の周波数で雑音が増大する頻度が大幅に減少しました。 ただし、Sメーターの反応を遅らせすぎると、信号のピークにダイヤルを同調させにくいという問題がおこりますので、この遅らせる時間はさじ加減で決める事にしました。 完全対策ではありませんが、我慢できる程度までノイズを削減できました。

ノイズ対策をしたソースコード AM_TRX50MHz2.cをダウンロード

5月連休の最中、運よくEスポが発生しましたので、50.53付近でCQを出したところ、7エリアのOMよりコール頂きました。 その時、音質がこもりぎみで了解度がおちているというレポートを頂きました。 変調した波形をオシロで見ていると、音楽の場合、気にならないのですが、マイク音声の場合、中域以上の波形が目立たないので、気にしていたのですが、やはり、了解度を損ねる程の音質になっていたようです。

Modftoku_2

原因は、MICアンプの周波数特性の低域がかなり伸びており、さらに、マイクを接話状態で使った為、接話効果が加わり、低域のレベルが増大した結果、このレベルでアンチサチレーション機能が効いてしまい、中広域が大きく減衰したものでした。 左のグラフの様に、マイクアンプの200Hzの周波数特性を-10dBくらいまで落とす対策(青色)を行い、接話状態でも低域によるアンチサチレーション機能が起こりにくくして対策しました。(赤色がアンチサチレーションが動作するレベル) このアンチサチーレーション機能をOFFにする事も検討しましたが、周波数特性を調整する事で、異常はなくなりましたので、リミッター機能そのものは残しております。 アンチサチレーションON状態でも、音声信号のクリップはゼロではありませんので、変調度監視のレベルメーターの時定数をリアルに調整して、しゃべる時は常にメーターを見ることにします。

100modmtr

Mod100

Mod50

オシロの画面を見ながら、ドライバー段の出力や、アイドル電流を調整した結果、変調度メーターが100%を示したときの630Hz変調波形が真ん中の波形です。右の波形は50%時の波形で、両方とも歪は非常に少なくなっています。 この時の無変調時の出力は8Wです。 出力が8W以上にならないのは、ドライバー段の出力が電源電圧で決まってしまい、ドライバー入力を大きくしても出力は飽和状態になっている事が原因です。 

この状態でローカル局に聞いてもらったところ、こもった音はなく、変調が少し浅いと感じるが歪はあまり気にならないとの事でした。 変調が浅いと感じる理由は、歪を警戒して、変調度計が半分くらいしか振れないようにしたことが主な理由と思われます。 今年のEスポシーズン中にEスポQSOを再度トライする事にします。

見直した変調回路 6mamtrx_txmodunit4.pdfをダウンロード

トランシーバーが実用レベルになると、色々と欲が出てきます。 いままで一番不便だったのが、ラスト周波数メモリー機能が無く、電源をいれる度に周波数が50.500.0に設定される事でした。 このトランシーバーに使用しているPICマイコンはPIC24FJ64GA004という品番で、専用のEEPROMを内蔵しません。 不揮発性のメモリーがほしい場合、プログラムを格納するフラッシュメモリーエリアにデータも書きこむ必要があります。 しかし、その方法は複雑で、いままで避けてきたところですが、3日間くらい苦労した結果、ラスト周波数をメモリーする事が出来るようになりました。 詳細はこちらを参照ください。

ラスト周波数メモリー付ソフト AM_TRX50MHz3.cをダウンロード

Lcdrit98

6mamtrxcomp

50MHzのAMでは、クリスタル発振子によるスポット周波数での運用もあることから、現在設定している±9.9KHzのRIT周波数では不足する可能性があります。そこで、このRIT周波数を±98KHzまで拡大する事にしました。 マイコンのソフトを変更して拡大してみると、2.5KHzスパンのチューニングは粗すぎる事が判りましたので、現在VOL可変に使用していますロータリーエンコーダーを1KHzスパンのチューニングツマミに変更し、RITでも使えるようにしました。 VOLコントロールは可変抵抗を追加してアナログ式に変更しました。 VOL可変時のノイズも無くなり一石二鳥です。

また、過変調でキャリアがゼロになるのを少しでも軽減する為、PWM生成出力をインバーターで反転し、変調のD級アンプをドライブする事にし、今まで無変調時の終段RFアンプのDC電圧が5.7Vであったものを6.0Vに上げました。 この変更により、音声がPWM変調器でクリップするような場合でも、キャリアがゼロになる事は無くなりました。

この状態で、2回目のEスポによるQSOがJR8の局と成功し、6月には、野呂山山頂に移動し、3回目となる、9エリアと2way QSOも成功し、一応トランシーバーの完成を確認できました。 次の目標は、今年の6M&Downコンテストで何局と交信できるかになりました。

そして、6m &Downコンテスト当日、AM局を探しましたが、1局も見つかりません。 仕方なく、SSB局へゼロインしてコールすると、やっと13局とQSO出来ました。 さすがにコンテンスト中という事もあり、こちらがAMであるという事に気付いた局は1局も有りませんでした。 AMキャリア8WのUSBバンドのみをフィルターで選択すると、ピーク2Wになります。 SSBのQRP局5Wより小さくなります。 Eスポも出て北海道や沖縄の局がパイルをさばいているところで、コールしても取ってもらえる確率はほとんどなく、CQを出し始めた局がかろうじてピックアップしてい頂いた結果です。

これで6m AMはしばらくお休みとします。

最終の配線図

6mTRX_DDS_PLL-VFO4.pdfをダウンロード

6mAMTRX_BFO4.pdfをダウンロード

6mamtrx_txmodunit5.pdfをダウンロード

最終のソフト AM_TRX50MHz4.cをダウンロード

フォントファイル Font7.hをダウンロード  fontF30.hをダウンロード

番外として、28MHz用のD級アンプの検討を行いました。 こちらを参照ください。

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2019年4月20日 (土)

アルミ板ベンダーの自作

無線機を自作進行中ですが、回路が完成すると、それを無線機としてまとめる必要が生じます。 通常は、アルミシャーシの上に配置して、適当なパネルを立て、操作できるようにしたケースなしの物になりますが、 移動運用に使う目的の場合、持ち運びが簡単で、容易に壊れない事が要求されますので、ケース加工がマストになります。 いままで、アルミ板の曲げ加工をバイスと木製の当て木だけで行っていた関係で、美しく仕上げる事が出来ませんでした。 当然、寸法出しも難しく、なるべく曲げ加工が無いように作ってきましたが、50MHz用AMトランシーバーを製作する過程で、アルミ板の曲げ加工の必要が生じ、ベンダーマシンを手配する事にしました。

インターネットで調べると宝山がDIYに使えるベンダーを発売していますが、結構な値段がします。 さらに調べていくと、アルミ板くらいなら、ベンダーを自作されている人が沢山いらっしゃいます。 どうせ年に数回しか使わない工具ですので、先人にアイデアを頂きながら、私も自作する事にしました。

Bender2

インターネットにある自作ベンダーの記事を頼りに、左の蝶番と、20mm幅、厚さ2.5mmの鉄製Lアングルをホームセンターで手配し、半日で作ってみました。

ところが、Lアングルの回転半径が大きく、曲げ代が15mm以下になると、アルミ板を曲げられません。 15mm以上のものは一応曲げる事はできますが、折り曲げのRが大きく、結局、またバイスでつかんでハンマーでたたくという作業が必要になってしまい、アルミ板はボコボコです。

インターネットで紹介されている自作ベンダーのほとんどの記事で、概要はわかりますが、詳細な寸法や調整の仕方など、詳しく紹介している記事を見つける事が出来ませんでした。

Bender

そこで、欲張らずに1mm厚のアルミ板に限定したベンダーを、構造から検討し、寸法精度が出ない分は組み立て時、微調整するという事で、再製作を開始しました。

左の図面は、曲げ加工の原理図です。 黒のハッチが二つのLアングルで、赤色が1mmの板厚のアルミ板の位置を示したものです。 青色のアルミLアングルは折り曲げる板を下から挟む為のものです。

真ん中の円は蝶番の回転中心です。 今回の蝶番は先の失敗した物とは異なり、ビス止めする板の部分がフラットのまま回転軸に回り込む構造の物にしました。 また、この蝶番の板厚は1mmのものとし、この1mmが折り曲げるアルミ板の厚み上限となります。

板厚1mmの蝶番というのは、結構小さい形状で、耐荷重も大きくありません。 従い、寿命も短いとは思いますが、ガタがくるようになったら、蝶番を交換する事にします。

原理図では蝶番の回転軸にそって、右下のLアングルを起こすと、左上のLアングルの角の部分を支点として、直角にアルミが折れ曲がる事を示しています。

Bender1

原理図を元に蝶番の位置を決め3mmのビスナットで組み立てたのが上の写真です。 ビス穴は4.5mmを開けてあり、原理図のように1mmのアルミ板を挟んだ時、ぴったり隙間なしになるよう位置決めしてビスナットを締め付けました。

Bender3

実際に取り付けた蝶番が左の写真です。Lアングルを立てた場合、蝶番を止めるビス頭が一方のLアングルに緩衝しますので、8mmの穴を開け逃げてあります。

8mmの穴の近くにある3個の穴は失敗した蝶番の止め穴で、今回のベンダーには無関係です。

下の写真は曲げ代10mmで試験的に曲げたものです。Lアングルは90度までしか曲がりませんので、アルミ板の曲げ角度は88度くらいまでしか曲げられません。 この構造ではこれ以上は無理ですので、曲げ加工後、あて木で矯正する事にします。

Bender5

このベンダーで実際に板を曲げる場合、このLアングルの下に2mm厚のアルミLアングルを敷き、このアルミLアングルとベンダーのLアングルの間に曲げようとするアルミ板を差し込みます。 当初、この幅20mmのアルミLアングルだけでしたが、本来曲げる位置から約25mmの位置で2度くらいの折れ線が生じます。曲げる時の力が作用して、Lアングルのはしっこでアルミ板に余計な力が加わるようです。

対策としては、2mm厚のアルミ板を幅200mm、奥行き60mmまで両面テープで張り付け、力が集中しないようにしました。 効果は完全ではありませんが、手で矯正すれば治りますので、良しとします。

Bender8

上の写真が、2mm厚のアルミ板を敷いた状態です。 また、ベンダーアングルを固定する為にクランプを使いますが、そのクランプがつかみやすいように木製の台を作りました。 この板の下に下駄の歯のように、30mm角のサンをビス止めしてあります。

Bender6

曲げ幅が100mm以内なら指で押さえるだけでLアングルは90度回転しますが、100mmを超えると難しくなります。 その場合、上の写真のようにクランプで締め上げる事にしました。 最大折り曲げ幅は200mmです。

Bender7

左はこのベンダーで加工した、アルミシャーシで、トランシーバーのPLL VFOのケースです。最大曲げ幅は173mm、最少曲げ代7mm。 前回のボコボコのものよりかなり美しく仕上がりました。 

このケースを使ったトランシーバーはここで見る事が出来ます。 結構きれいに仕上がっています。

 

何回か使っていると、ビス止めしたLアングル同士がずれてきます。 曲げのRが大きくなってきた時は、再度Lアングルの位置関係を調整しなおしました。

また、曲げる外側のラインにカッターナイフでケガキ線を入れておくと、きれいに曲がります。 ただし、線をけがくのは1回だけです。 複数回けがくとそのラインで折れてしまう事があります。

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