« 2018年5月 | メイン | 2018年7月 »

2018年6月30日 (土)

6m AM用変調回路(PWM方式)

カテゴリー<6m AM >

6m AM送信機用のPWM方式変調回路を一から作ります。 7MHz用で最大ピーク出力800Wの変調回路を一度作っていますので、今回はピーク40Wであり、7MHz用をスケールダウンして作る事にします。 

PWM変調ICは秋月で購入したPAM8012というICを使います。 このICは以前、AMラジオのパワーアンプとして利用した事がありました。 7MHz用で使用したTPA2006との違いは、基板の占有面積が小さいというメリット以外に、内部に振幅制限回路が内臓されており、リミッターアンプのTA2011が不要になる事です。 ゲイン配分を最適化すると、かなりの範囲のレベルでPWMアンプの出力端の波形のクリップは起こらない回路が実現できそうです。 実際の予備検討でも、PWMアンプの前段がクリップするくらいの大入力でもPWM出力はクリップしませんでした。

 

もうひとつ、フォトカプラ―のICを高耐圧品に変える事です。 7MHz用で使ったTLP552のVCCは5Vで、変調終段をフロートする回路内に5Vの電源が必要でしたので、8Vの3端子レギュレーターとLEDでかろうじて5Vの電源を実現出来ていましたが、この5V電源回路を廃止するのが目的です。

H11l2

選んだフォトカプラーはH11L2という品番で1MHzのクロックでも動作します。 そして、正弦波の1KHzを加えた状態では、オーディオ信号がクリップしない限り綺麗な波形をしていますが、一旦クリップすると、左の波形のごとく、かなりのスプリアスをまき散らす結果になりそうです。 原因は、ターンオンやタ-ンオフ時間が最大で4uSecもあり、これが為に、波形がクリップする状態での急激な変化に追い付いていけない事のようです。 フォトカプラ―を選定する時は、オーディオ信号がクリップする時のスプラッタを見ておかないとヤバイ事になります。 ところで、TLP552はすでに生産中止になっていますが、東芝は代替えとして、TLPN137を推奨しています。この代替え品の方がより高速です。 RSでバラ売りされています。

結局、H11L2は使えなくなりましたので、まだ手持ちしていたTLP552に戻し、5Vの3端子レギュレーターを追加しました。 FETドライバーはTC4422のままですが、このICの耐圧は16Vあり、変調終段のFKI10531のゲートソース間耐圧は+/-20Vありますので、安定化電源は5Vのみとして、従来あった8Vの3端子レギュレーターは廃止しました。

この変調回路の基板内に変調度計の回路も入れ込みましたので、回路図は一見複雑になった様に見えます。 6mAMTX_MOD180630.pdfをダウンロード

6mam_mod_top

6mam_mod_back

左上が変調回路全体の部品挿入面です。 右上がその裏側です。 小信号の部分は0.05mm厚の銅箔でGNDを結んでいますが、変調終段の大電流回路はGNDもホットも0.3mm厚の銅板を敷いて、回路が不安定にならないようにしています。

PWM出力のLPFですが、RFアンプの計算上のインピーダンスは3.45Ωとなりましたので、このインピーダンスで3次LPFを計算すると、以下のようになりました。

6mpwm_lpf

このLPFは計算通りに行かないと言う事は7MHzのAM送信機にて、経験済みですが、最初の取り掛かりが、どのくらいのインダクタンスが最良なのか判りませんので、まずは計算で得られた定数でコイルを作り、その後、聴感で決めていく事にします。

6mtx_pwmmodlpf_4

左は、計算通りに作成した2個の55uHのインダクターです。 LANケーブルから取り出したAWG24のツイスト線を、2重のままカーボニルコアに巻いたものです。 ほどけないようにビニールテープで巻いてありますが、実装段階では、もう少し綺麗に処理します。

計算上のコンデンサの値は9.2uFでしたが、手持ちの2.2uFマイラーコンデンサ4個をパラレルに接続し、8.8uFのコンデンサを実装しました。 RF回路が動作確認できるようになったら、LCの定数を吟味する事にします。

6mpwm_lpf_block

変調回路の周波数特性です。

Audio_f_responce_4

赤がRF段につながるLPFの出力端に於ける周波数特性です。 青色は変調度計の周波数応答特性です。 1KHzをピークとして、300Hzから3KHzまでお椀型の特性をしており、音楽の音質には向きませんが、音声の了解度は電話機並みの特性をしております。

現状の配線図6m_AMTX_01.pdfをダウンロード  (RF部は動作未確認)

今回、移動にも使えるという目標で、この送信機を設計していますので、ホームで使うダイナミックマイクは使えません。 そこで、携帯トランシーバー用のPTT付マイクをさがしましたが、これが以外と高価です。 インターネットショップを検索していると、サンワサプライのコンデンマイクで、MM-MC1というPC用のスタンドマイクが見つかりました。 価格は送料込で600円弱。 マイク出力に負荷抵抗となる2.2KΩ越しにDC4.5Vを加えると動作します。 感度は普通のダイナミックマイクと同じくらいですが、無指向性ですから、マイクボリュームを絞り気味にして使う事にします。 オシロをモニターとして、マイクから20cmくらいの距離から普通にしゃべって変調度計が80-90%くらいを指示するようにOPアンプのゲインを調整しました。

Mic_2

左は、この記事の中で紹介したサンワサプライのコンデンサマイクMM-MC1です。 このマイクは無線通信には向かないという事が判りましたので、レポートする事にします。

インターネットや単純に録音する高S/N環境で使う場合、周囲の高音域のノイズが邪魔になる為、高域カットを行うと了解度が向上する事は知られており、このマイクの周波数特性は、これを意識したもので、1KHz以上ではかなり高域カットを行っているようです。 ところが、この送信機では、3KHz以上の変調を極力抑える為に、3KHzのLPFを内臓させている事に加え、受信機のIFフィルターで高域をばっさりカットしていますので、マイク単体の高域カットと合わせて、了解度を著しく損なう音質になっています。 この為、S/Nの悪い無線環境では、かなり音量を上げないと、なに言っているのか良く判りません。 回路的に中高域を増強する手段をマイクアンプに追加して見ましたが、 この了解度の改善は不可能でした。 マイクを手で握りしめ、音響特性が変わるような細工をすると、中高域が出力されるようになるので、このマイクは構造的に中高域が減衰するような特性に設計されているようです。

以上のことから、このマイクは送信機用には不向きと判りましたので、YAESUのトランシーバー用に設計されたハンドマイクに変更しました。 このYAESUのマイクもコンデンサマイクですが、音質は、トランシバーで使用したとき、最適な音質になるよう設計されています。 

変調器も出来ましたので、電源や、スタンバイ回路、50MHz LPFなどを実装する為に、シャーシ加工に取り掛かります。 50MHz PWM変調方式 AM送信機 1 へ続く。

INDEXに戻る