QRP CW トランシーバー 1
車で行けないような山でも、リュックサックに詰め込んで運べる乾電池で動作するQRPトランシーバーを探していましたら、「貴田電子設計」という会社がQRPPのキットを販売している情報を入手し、さっそく注文して組み立て開始しました。(2010年の製品で現在は見当たりません)
キットの商品名は「KEM-TRX7-LITE」というもので0.5Wの出力の7MHzオンリーのCWトランシーバーです。このキットは良く出来ていまして、説明書通り作ったら、すぐにQRPPの交信が出来てしまうほど、完成度の高いものです。バラックのままで、しばらく交信を楽しんでおりましたが、さすがに0.5Wでは、コンディションの影響も大きく、ストレスが溜まります。そこで、せめてQRPと言える最大出力である5WまでQROすることにしました。
たかが、7MHzの5Wアンプと軽く考えていましたが、(昔、水平出力管による10Wのアンプで苦労したころに比べたら雲泥の差があります。) オリジナルの設計に加味されていない変更を行うと、なかなか思うようにいかず、オリジナルの設計内容まで対応が必要になり、かなり難儀しました。
目標の仕様を設定します。
- 出力は5Wと0.5Wの切り替え方式。
- 電源は単3アルカリ電池 8本使用の12V。
- 手動アンテナチューナー内蔵。
- 受信音はスピーカー/イヤホーン両用。
- 移動に使っても十分な強度が保てるケース入り。
まずは、パワーアンプの検討から。電池仕様ですから、効率の良いC級アンプと決めて、回路例を探している内にE級アンプという、もっと効率の良いアンプがある事がわかりました。C級が65%くらいの効率なのに対してE級は85%くらいはいけるみたい。乾電池で動作させる場合、この効率が即連続運用可能時間につながりますので、内容も良く調べずにE級アンプに決定。インターネットでE級アンプを検索すると、私が設計するには十分過ぎる技術情報が得られました。E級アンプのカナメは負荷となるLCのフィルターですので、最初、このLを色々な資料がほとんど採用しているトロイダルコアで作ることにしました。
ところが、参考資料として提示されているインダクタンスやキャパシタンスになるように設定してもパワーはなかなか出ません。効率も50%以下。指定された型名のコアを使っていない事が原因なのでしょうが、うまくいきません。ジタバタしている内に、コアを使わなくても空芯コイルで実現できることがわかりました。MMANAでコイルの直径や巻き数を求め、エナメル線をPPシートを丸めたボビンに巻き込み、瞬間接着剤で固めてしまいます。Lが大きかったら解き、小さかったら作りなおして、調整すると、6Wの出力が出るようになりました。 無理すると7Wくらいでます。効率は能書き通りにはいかず6W出力で70%くらいです。 コレクターの電流波形は、E級アンプの技術資料に出てくる通りの波形をしていますので、曲りなりにもE級アンプとして動作しているのでしょう。 スペアナで高調波を調べたら-60dBくらいのノイズフロアーに隠れて見えません。 多分LCの組み合わせを最良にもっていけば80%くらいの効率も可能かも知れませんが、とりあえずこれで良しとしました。
スペアナを交換したら、-60dB以下のレベルも見れるようになりましたので、5Wアンプの入力部分を設計変更しました。添付配線図やアンプの画像は変更後の回路に差し替えてあります。
これまでの検討はTS-930SをTUNEモードにしてダミー抵抗に0.5Wくらいの出力を消費させ、これを信号源として使っていました。 いよいよ、KEMのトランシーバーへ組み込み作業です。
QRP CW トランシーバー 2 へ続く