TS-850S ALC動作異常
ALCが動作しているとき、ALCレベルを示す棒グラフと、送信出力が脈打つというトラブルの対策です。
メインのTS-930Sが機構部品の破損で操作不能になり、その部品探しをしている最中なので、サブのはずのTS-850Sが現在メインで使用されております。 その中で、3.5メガのアンテナは7メガのフルサイズダイポールをMTUで強制同調させて使っている関係で、非常に帯域が狭くなっております。ベランダに置かれたMTUをいちいち調整し直すのが面倒なので、SWR1.5位いの範囲ならそのまま使っていますが、CWで送信すると、ALCレベルが周期的に揺れて、それに伴い出力も波打つというトラブルが発見されました。アンテナとの整合状態がSWR 1.2以内くらいなら異常は発生しません。
判りやすく説明すると、アンテナのマッチングがSWR1.5くらいまで悪くなっている状態で3.5メガでTUNEテストをすると、出力を上げたとき、ALCのメーターの棒グラフが最小から最大まで1秒くらいの間隔で脈打つというものです。この脈打ちの周期に同期して出力も脈打ちます。7メガでは発生しませんが、3.5メガで発生します。
故障なのか、もともとの性能なのか、不明でしたのでGoogleで「TS-850S ALC」で検索してみました。すると、いっぱい出てきました。You Tubeに動画が存在するほどの、かなり有名なトラブルみたいです。
原因はALCアンプのマイナス電源を作っているDC/DCコンバーターの不具合みたいです。新品のころは、元気良く発振していたマルチバイブレーターが、トランジスタのhFEが低下したのか、周囲の電解コンデンサが劣化したのか、なんらかの原因で発振が停止するようになったのが直接の原因のようです。
手っ取りばやく対策するには、マルチバイブレーターの正帰還量を増やしてしまえばよいことです。修理事例としてはベース抵抗を小さくする方法が多くありました。
問題の基板の名称は「X59-1100-00」で、その中にあるR2とR3を22KΩから13KΩに変更したら直ったと有りました。この対策なら現行の22KΩにパラに抵抗を足してやれば済むことで、早速、ケースを開け、この基板を探し出し、抵抗を追加しようとしましたが、かなり奥まったところにあり、とてもそのままでは半田付けできません。やむなく、基板を引っ張りだして、コネクターを外し、基板単体にした上で、手持ちの47KΩをR2とR3にパラ付けしました。合成抵抗は15KΩとなり、13KΩにはまだ不十分ですが、基板を元通りに取り付け、3.5メガでテストしました。SWR 3でも、問題なしとなりました。
とりあえず、当面の異常現象は解決しましたが、3.5メガでSWRが悪化したときに、出力を制限するALC動作が、他のバンドのときより、きついという現象が残っています。SWRが1.5くらいのとき、最大出力は70Wくらいしか出ません。SWR1.2くらいでやっと100Wです。いくらアンテナチューナーを内蔵しているからと言っても、プロテクトのかけ過ぎです。これが正常状態なのか異常状態なのか判りませんので、暫く様子をみます。
暫く様子を見ていましたら、3.5メガでCW送信すると、時々、ALCの動きがおかしくなり始めました。どうも以前の症状が再発したようです。アンテナの負荷条件が変ったのかもしれません。ベース抵抗を小さくするという対策だけでは不完全のようです。正帰還量を増やす為ならベース・コレクタ間の2200PFを増やせばよいことですから、このコンデンサC1,C2に1000PFをパラに追加することにしました。前回の47KΩ追加と合わせれば、CR時定数はほぼ同じとなりますので、都合もよさそうです。ちょうど手元に1608サイズのチップコンデンサがありましたので、これをパラに追加しました。今度は問題なさそうです。ただし、プロテクトのかけ過ぎは直りません。
そうこうしている内に、故障中のTS-930Sが修理完了しましたので、またサブ機に逆戻りしてしまいました。プロテクトのかけ過ぎの問題は、とりあえずお蔵入りです。
プロテクトのかけ過ぎは、TS-850Sの問題では無く、アンテナ系が原因でした。詳細は、カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムの3.5MHz ALC動作異常 で紹介しています。