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2022年1月10日 (月)

160m SSB送信機 QRP パワーアンプ

カテゴリ<SDR> [1.8MHz  自作  dsPIC]

1.8MHz用SSB送信機から出力が得られるようになりましたので、これで200Wリニアアンプをドライブできる出力、約5Wが得られるQRPリニアアンプの製作です。

リニアアンプの製作にかかる前に2MHzのLPFを作ります。

2mhzlpfschema

2mhzlpfshumiratiton

インターネット上の計算で求めた2MHz LPFの各定数が左上の回路図です。 その時のシュミレーションデータが右上になります。 

1.9MHzまでフラットで、第2高調波となる3.6MHz付近で,-35dBくらいの7次LPFとしては一般的な特性です。

Im2mhz_lpf_2

Lpf2mhzdata

そして、実際に作られたLPFが上の写真で、その実測データが左の特性になります。

計算のままの定数で作ると、1.8MHz当たりで-2dBくらいになりますので、C2の2660Pを2100Pに変更してあります。 実物の写真でもC2を作る560Pのコンデンサのリードを半田付けせず宙に浮いているのが判ると思います。

この修正を行っても第2高調波付近の減衰は-35dBくらいを確保できていますので、このLPFで進行します。

使用しましたカーボニルコアはT50-2で、0.5UEWを約30回巻いて5uHをめざしましたが、ぴったり5uHになっていません。 また、7uHも実際は7.14uHになっていましたので、計算通りにはいかないようです。 LPFの各シールド壁を貫通する貫通コンデンサは100Pのものですので、それを加算してあります。

コイルのインダクタンスはこれで計測しました。

160mpwramp_sch

160m_5w_ampunit

そして、上の回路図が、5W QRP AMPの構想レベルです。

下の写真がそれを実際に組んだ状態です。

終段は7MHzと同じ、2SK2796Lのプッシュプルで、そのドライバーは手持ちの関係で2SK2382です。 当初ドライバーをトランジスターで検討したのですが、入力インピーダンスが低すぎて、前段のリニアリティが確保しにくい状態でしたので、ジャンク箱の中で眠っていたスィッチング用高出力のFETを使用する事にしました。  このFETはモールドパックの外観をしており、放熱板にビス止めし、無信号時の発熱を防止すると共に、ソースに0.33Ωの抵抗を挿入し、かつダイオードによる熱補正もかけて安定化を図っています。

次にファイナルにダミー抵抗を接続し、特性の確認をおこないました。 結果はNGでした。 最大出力は10Wくらいは得えられますが、とにかくリニアリティがものすごく悪い。 2トーン信号を加えて波形を見ていると、2Wくらいまではなんとか見られる波形をしていますが、それを超えたとたん波形がゆがんできます。 波形が左右で歪むので、原因はフェライトコアと思われます。

調査した結果、ドライバー段のトランスが原因でした。 このトランスのコアは、7MHzと同じものでしたが、今回のドライバーのFETは電流が多くなっている事に加えて、周波数が低いからと、7MHzのとき1次側が2Tであったものを4Tに替えた事が原因で、コアが磁気飽和したものでした。 そこで、磁気飽和がおこりにくくするため、コアサイズをツーランクアップしTDKのHF70BB9.5x10.4x4.9という品番の変更し、巻き数も2Tにもどしました。 しかし、2Tに戻した事により1.8MHzでのロスが生じますので、2次を4Tにするのではなく、6Tとし、かつ全巻線をバイファイラ巻きとしました。 これらの変更を行った結果2W以上でも歪は発生しなくなりましたが、10Wで歪始める状況でしたので、L3のコアをESD-R-28C-1に変更しました。 また、T4のコアは予定通りESD-R-18SDのままですが、1次側を4T、2次側8Tとしたバイファイラ巻きにした結果、クリップ開始は12Wくらいになり、最大出力は16Wとなりました。

160mpwramp2_sch

上の配線図がこれらの変更を加えた最終状態です。 その最終実装状態は下のようになりました。

10wampwtlpf

5wpep

10wpep


左上の波形が5Wpep、右上が10Wpepの波形で、一応まともな波形をしています。 実際に動作するのはMAX5Wの状態です。

5wpwroutwide

左は5W出力時の広帯域スプリアスデータです。 基本波の前後、百数十KHzの範囲にスプリアスが見えますが、問題ないレベルです。 また、高調波は完全に無視できます。

10Wの時も測定していますが、同じ状態でした。

ただ、リニアリティは、前回の7MHz用10Wアンプに比べ、良くありません。

5Wpepのとき、3次IMDが-28dBくらいでした。 このままでは、SDRの名が廃れますので、ON AIRする訳にはいきません。 

 

 

Imd5wpep_3

詳細調べたところ、ドライバーFETの入力インピーダンスがまだかなり低く、その前の2SC2712のアンプで歪んでいることがわかりました。 そこで、パワーアンプの前にマッチングトランスを置いて、インピーダンスマッチングを行った結果、ドライバー段入力部で3次IMDが-37dBとなりました。 しかし、7MHzアンプでは、この段のIMDは-50dBくらいありました。 そして、5Wpep出力時のIMDは左のデータのごとく-28dBしか有りません。 まず、ミキサーに問題がありそうです。 さらに、ドライバーFETに問題があると考え、手持ちの他のFETやトランジスターに変更してみましたが、どの条件でもあまり変化が無い事が判りました。 ただ、7MHzの時と同じようにドライバーをRF電力増幅用の素子に変えると若干の改善がみられます。 終段の2SK2796Lは7MHzのアンプで実績がありましたので、疑っていなかったのですが、試しに、片方のアイドリング電流を変化させると、IMDのデータが変わります。 どうも、7MHzのアンプは、たまたま特性のそろったFETを使用した為、すんなり好成績がえられましたが、プッシュプルで使用するFETの特性をペアでそろえる必要があるみたいです。 

160mimd

 

そこで、全回路を再点検する事にしました。 DSPの出力をOP-AMPでバッファリングしていますが、このアンプの出力ポイントでの3次IMDは、-60dB以上ありました。 従い、ミキサーに問題があるようです。 前回の7MHzミキサーと異なる部分がありますので、定数を7MHzミキサーに合わせました。 R49は7MHz版には無かったのですが、効果がありそうという事で、追加しました。 その結果、Q4の出力ポイントでの3次IMDは-44dBくらいまで改善しました。 

Pwramp02

Imd5wpep


次に、ドライバーのFETはCB用のトランジスター2SC2078に変更しました。 入力インピーダンスが下がりますが、 トランスを追加しましたので、問題なく動作します。 トランジスターにした事により、出力インピーダンスが変わりましたので、T3の巻き数比を2:6から2:4に変えました。 そして、ファイナルのアイドリング電流をIMDがベストになるように調整した結果、5Wpep時の3次IMDが-35dB、5次IMDが-40dBまで改善できました。
7MHzのようにはいきませんでしたが、一応納得できるレベルです。

  

 

 H3e100pct_2

気にしていました、H3Eの変調波形を確認してみました。 左の波形が100%変調のAMから片側のサイドバンドを削除した状態です。

この波形をエンベロープ検波すると、歪だらけになると思われ、実際に音楽を変調してTS-850にて聞いてみると、歪だらけの音でした。 しかし、音声だけならあまり気にならなく、SSBの時より了解度はアップします。 多分、歪んだ高調波のおかげで、サシスセソの音がはっきり聞こえる為に生じる現象と思われますので、キャリアレベルはSSBの最大振幅の半分(電力では1/4)に設定し、もし、QSOの相手局より歪が多いですと言われたら、H3Eであると言い訳する事にします。

 

これまでの全ての変更を網羅した配線図 160m_tx_4.pdfをダウンロード

 

次は200Wリニアアンプの検討になります。

 


160m SSB 200W リニアアンプ へ続く。
 

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