160m SSB送信機 組み立て開始
カテゴリ<SDR> [1.8MHz 自作 dsPIC]
dsPICによるSSBジェネレーターの構想がまとまりましたので、これをベースにブロックダイヤグラムを検討し、実際の送信機製作にかかります。
まず、ブロックダイヤグラムグラムです。
今回、製作するのは、上のブロックダイヤグラムの緑色の枠で囲った部分のみです。 リニアアンプは出力5Wくらいのアンプを想定し、この後にさらに200Wのアンプを繋ぎますが、まだ、どのような構想にするか白紙状態です。
構成は、前回の7MHz用トランシーバーと全く同じですが、受信が有りませんので、かなりすっきりとしたブロックになっております。変わったところは、マイクアンプのリミッターアンプとして、ONセミコンのSA2011の手持ちがありませんので、秋月で入手できるNJM2783に変更した事とと、DSPの出力バッファとして3V電源の使用が標準となるOP-AMP AD8352に変更したくらいです。 それに加えて、前回の記事で紹介した周波数関係に修正しました。
回路の実装は秋月で扱っているユニバーサル基板で一番安い95mm x 72mm片面基板上に行いますが、この実寸大の図面をJWW CADで作成し、それに個々の部品を配置して、全体の信号の配置を把握してから作業にかかります。
左がその図面で、これを作図するようになってから、基板配線の作り替えが無くなりました。
一応、部品の外形寸法は実物を実測したものを使っています。配置が悪くて部品を移動したいときは、JWWの選択機能を使い、移動もしくは、複写で対応します。 実際の配線に移る時に、配線のやりやすい配置が見つかり、このJWW図面の通り出来上がる事はありませんが、それでも最初に作図して置けば、最後に部品を収納できずに基板が2枚に別れるような問題は生じません。
JWWの配置図をベースに実装した基板が上の状態です。左が、部品実装面、右が配線とチップ部品の実装面です。今回はdsPICとPICを乗せた基板にRF回路も実装しましたが、電源部分を収納できませんでしたので、左の基板のように、電源部のみ専用の小基板で作成しました。 電源と言っても、12Vの外部電源から5Vの電源を作る事と、受信機やリニアアンプの送受信切り替えなどのインターフェースのみ実装してあります。
これらの基板は、まだ組みあがったばかりで、一部アナログ回路のベース抵抗も未実装です。 これは、信号を加えながら、歪最良点を探した後、固定抵抗に置き換えます。
これらの回路の仮の配線図です。 160m_tx_0.pdfをダウンロード
まだ、実働テストをしていませんので、この配線図の通りで動作する補償はないのですが、配線図が無ければ、試作もできませんので、とりあえず机上で作成された配線図になります。 リニアアンプ部は仮の状態で、まだ使用する石も決まっていません。
今後、通電テストやソフトのインストールを繰り返しながら完成度を上げていく事にします。
まず、マイクアンプから。 1石アンプの初段のベース抵抗を決めます。 当初の設定は5V電源で47Kでしたが、電源電圧を9V近くまで上げましたから、5V設定時の抵抗のままでは、予想通り波形の半分がクリップしていました。 ここは500KΩの可変抵抗をもってきて、最適値を探したところ、180KΩとでましたので、180Kの固定抵抗に決定。ちなみに、この時の電源電圧は8.5Vでした。 この1石アンプのゲインは計算上で29dBあります。
次に初めて使います、JRCのALCアンプです。 マイクVRの部分で-6dBのロスがありますので、このALCアンプのゲインを40dBに設定すれば、通常のマイクアンプゲイン約60dBになりますので、このALCアンプのゲイン設定は40dBとしました。 次に、出力レベルですが、dsPICのAD入力は3VppがMAXですから、ICとしての出力レベルは、この後に続く、CRによる3次LPFの通過損失をカバーできる4Vppくらいが必要です。 実測値は3Vppくらいいしか有りませんでしたので、ポストアンプで2.5dBくらいのゲインを確保しないといけません。 そこで、初期設定で0dBのゲインにしていたものを、約2.6dBのゲインが得られるよう回路変更しました。
下の配線図で、R13, R14, C5 の追加です。
次にCRによる3次LPFですが、CR LPFを多段接続した時のノウハウがアナデバの技術情報として公開されていましたので、これを利用しました。 公開されているのは2次まででしたが、この考え方で3次を作成したら、良好な結果が得られました。 基本的な考え方はCRによるターンオーバー周波数を一定にしながら、CとRを10倍単位で変化させる事です。 私の回路では、シリーズに入る抵抗の合計は9.9KΩでしたので、82+820+8.2Kの構成で良いのですが、最適なコンデンサの容量を手持ちしていませんでしたので75+750+7.5Kのシリーズ抵抗に0.33, 0.033, 0.0033uFのコンデンサで構成することにしました。 左上の回路図で、R75,R23,R22,C44,C43,C27が該当します。
上のふたつのグラフが最終的なALCアンプのデータです。 左上は、外部入力端子から入力を加え、リミッターが動作した時の特性で、オーバーレベル30dBでも振幅を一定に保ち、歪もありません。 マイクアンプとしては、全く問題なしです。 右上のグラフは青の線がALCアンプの振幅制限がかかっていないレベルでの、周波数特性です。 高域は10KHzまでフラットになっています。 赤色のデータは3次のCR LPFを通過した後の、dsPICのAD入力に加わるレベルの周波数特性です。3KHzで約-3dB、10KHzで-20dBとなっています。 18KHz以上の信号が入力されるとエイリアシングノイズが発生しますが、信号源がマイクですので、問題は無いでしょう。 グラフ上では1KHzのレベル差は無しとなっていますが、実際はLPFの前後で2.5dBのゲイン差があります。 このCR定数を決めるのに丸1日かかっていますが、CR多段接続時のノウハウが取得出来た事で大きな成果となりました。 この多段接続の最大のノウハウはLPFへ出力するアンプの出力インピーダンスが、せめて初段の抵抗の半分以下で有る事、シリーズ抵抗の合計値は負荷となるアンプ及びバイアス供給回路からなる負荷インピーダンスの1/4以下である事でした。
ここまで出来たので、次はdsPICの中身になりますが、その前に、システムマイコンをまともに動作させることが先決です。
以下2022年1月1日からの作業になります。
システムマイコンは、受信機能を廃止するだけで簡単にできると考えていましたが、いつものコネクターのPIN番号の逆順が発生し、1日、棒に振った後、なんとか動作を確認できました。 この確認の最中に、送信インジケーターが抜けていることに気づき、コネクタの変更も生じましたが下の写真のごとく、とりあえず、必要な機能は表面上は正常に動いています。
システムマイコンがOKとなりましたので、次はLO2とLO1の確認です。
左上がLO2、右上が1850KHz送信時のLO1です。 両方ともスペアナの校正は画面のセンター周波数のみで行われており、表示されている周波数は誤差がありますが、実際の周波数は標準電波で校正した周波数カウンターで、LO2は16003.937KHz付近に、LO1は17879.855KHzに合わせてあります。 LO2は2SC2712によるコルピッツ発振器、LO1はSi5351による可変周波数発振器からです。LO1の10.7MHz付近に-52dBくらいのスプリアスがありますが、これが問題になる事はないでしょう。 その他、高調波も問題になりません。
次は、dsPICによるSSBジェネレーターの確認です。
上の3枚のスペクトルはWSにてPC上に表示させたdsPICの出力です。 dspPICの入力からホワイトノイズを加え、上から順にLSB,CW,AMモードです。 一応期待通りの出力が得られております。 AMはLSBにキャリアを加えただけのH3E形式です。 WSでモニターすると、DSPの中でデジタル的なオーバーフローがある場合、スペクトルがメチャメチャになりますので、適正レベルで動作しているかも一目瞭然です。
これらのレベルは、とりあえず、正常に動く範囲で設定しましたが、最終的には、スプリアスレベルやリニアアンプのリニアリティを見ながら再調整しますので、上の画像が最終状態ではありません。
さて、次は二つのダブルバランスミキサーとスプリアス確認となります。
1.8MHzに変換した後の、16MHzのキャリアリークとUSBイメージは-30dBから-40dBくらいで、全く話にならない状態でしたが、以下のように対策できました。
左上のスペクトルが1.8MHz LSB出力のワイドバンドです。高調波以外目立ったスプリアスはありません。 右上は、LSB信号の近傍の16MHzキャリアリークとイメージとなるUSB信号のスペクトルです。 キャリアもれは、-62.7dBで全く問題なし。 USBもれは、ノイズに埋まって見えません。(第1ミキサーで、LSB/USBが反転しますので、USBのイメージはキャリアの下(左側)に出ます。) これらの対策は、その下の配線図に赤枠で囲ったコンデンサ、C9及びC25の追加です。 手法は前回の7MHzトランシーバーと同じですが、容量が異なります。
ここまで、確認した後、第1ローカルOSC(LO1)の周波数校正がまだ終わっていない事に気づきました。 そこで以下の手順でLO1の校正をおこないました。
①TS-930で10MHzのBPM(中国の標準電波)をAMモードで受信します。
②この送信機のLO1の周波数を10000.000KHzに設定し、ビート音を確認します。 そして、ビートの周期が1Hz以内になるように、LO1の設定周波数を変えていきます。 すると、9999.994KHzのとき、ビート音が約0.5Hz(2秒周期)で聞こえます。 この時の周波数と10MHzの比は1.0000006となります。
③この比を現在のSI5351の水晶発振周波数24999633Hzに掛け算すると、24999648Hzとなります。 この状態でLO1の周波数を10,000.000KHzに再設定し、ビート音を確認すると、2秒周期くらいでしたので、さらにSi5351の周波数を1Hz単位で変化させ、ビートの周期が一番ながくなる数値を探します。 結果は24999646Hzのとき4秒周期くらいになりましたので、LO1の校正終了です。 校正結果は10MHzに対して+/-0.25Hzの誤差です。
④次にCW送信状態にして、LO2の周波数を校正済み周波数カウンターで測定し、16003937Hzに合わせますが、トリーマーを調整して、ぴったり合わせるのは無理ですから、+/-100Hz以内に追い込めたら良しとします。 LCDの表示周波数を1850.000KHzに設定しておき、送信周波数を測定します。 そして、測定結果が1850.000KHzになるように、PCのプログラム上で設定した周波数を修正します。 今回は測定された送信周波数が1850.071KHzとでましたので、 LO2の周波数を16003937-71=16003866Hzに設定すると、送信周波数はLCD表示通り1850.000KHzとなりました。
ここまでの配線図(ALCアンプのゲイン設定は60dBのまま) 160m_tx_1.pdfをダウンロード
SSBジェネレーターソフト SSB_generator_160m_0.cをダウンロード
システムマイコンソフト 160m_dspSSB_TX_0.cをダウンロード
SSBジェネレーターのCWとAMのキャリアレベル及びAMの信号レベルは仮の値です。 システムマイコンに追加したCW tone信号は正常に機能し、14KHzのサンプリング周波数で8bitのDAコンバーター(PWM)で出力されています。 トーンは約700Hzの正弦波ですが、トーンの開始及び終わりが必ずゼロレベルになるようにソフトを組み、キークリック音を防止しています。 下の写真は検討の為、仮組した送信機です。
スピーカーへのコネクタとRF OUTのコネクタがどちらもXHタイプの2pinで、このコネクターを間違い、入れ替えて接続してしまい、スピーカーアンプが煙を出して壊れました。 対策として、スピーカー側のコネクタをPHに変更しました。
以上で、SSBジェネレーターは完成しましたので、次の課題としてリニアアンプの検討を開始します。 その中で、最適なCWキャリアレベルやAMのキャリアレベルを決めていく事にします。