アンテナアナライザーの製作(ケース入れ)
手作り、バラック状態のアンテナアナライザーがなんとか完成しました。 しかし、アンテナアナライザーは基本的に屋外で使うものであり、これを実際に使用する為には、持ち運び可能なケース入りでなければなりません。
JW-CADで組み立て図を書いて、これを基に部品図面をお越し、雨の降る中、屋外で作業する事2日間。
アルミ板を切断したり穴を明ける加工は、ほぼ設計図面通り出来るのですが、曲げ加工は折り曲げ器がありませんので、当て木とハンマーで仕上げる事になります。 結局、曲げ部分は直角にならず、エッジも凸凹となってしまいました。
左の写真は、塗装前の状態で、LCDやタクトSWの位置確認を行ったものですが、JW-CADによる実寸組み立て図が功をはくし、センターずれは有りません。 ただし、LCDのコネクター部分に何も配置できない為、デザイン的に、やや間延びした縦長の箱になってしまいました。
裏板も作ったのですが、電池ケースを入れるスペースにSDカードのコネクターが張出し、電池ケースを収納できませんでした。
他にも、不具合があるようですので、再度分解して、SDカードのピンヘッダーの位置を含め対策する事にしました。
フロントパネル面のレタリングをデザインし、これをJW-CAD上で作成します。 このとき、邪魔にならない所に寸法を記入しておきます。 作成した原稿は、白地に黒の文字ですが、 ケースの塗装は黒色を予定していますので、 これをスクリーンショットでJPGに変換し、インターネット上のフリーソフトで白黒反転を行い、一度、windows標準付属の「ペイント」で読み込みます。 JW-CADの文字の種類が少なく、また色も限りがありますので、ペイント上で、文字のフォントの入れ替えや、必要に応じて、文字色や線の幅、色を修正します。 このJPGをエクセルに貼り付けます。 これを実際の寸法になるよう、印刷の縮小比を決めて、光沢フォト紙に印刷し、両面テープでケースの面に貼り付けます。 この縮小比を決めるとき、JW-CADで記入しておいた寸法が大いに役立ちます。
このようにして出来上がったアンテナアナライザーが左の写真です。 アンテナを接続するMコネクターの右側に飛び出ているビスは、アナライザーを接続する為に、取り外したトランシーバーへ接続されている同軸ケーブルのGND側とアナライザーを仮接続するGND端子です。 アナライザーが宙に浮いてしまうと、実際にトランシーバーから送信した時の浮遊容量の条件が異なってしまい、正しいSWRの計測が出来なくなりますので、これを防止する為、アナライザーのGNDを同軸ケーブルのGNDへ接続する為に使います。 CAA-500のように、アンテナ端子が2個ある場合、送信機に接続される同軸は、使用していないコネクターに仮接続しておけば良いのですが、このアナライザーのアンテナ端子は1個しか有りませんので、GNDだけは接続できるように端子を設けたものです。 実使用状態では、ここにミノムシクリップの付いたリード線を接続し、常にアナライザのGNDはトランシーバーのGNDと接続されているようにします。
実際にアンテナに接続して測定する場合の電源は電池で行い、決して外部DC電源を使わないようにします。アナライザーで調整したSWR最少周波数と送信機内臓のSWRメーターが示すSWR最少周波数が一致しない原因は、決まってこのトランシーバーのGNDと外部DC電源の性です。
間延びした縦長のケースはレタリングでごまかしました。 光沢フォトシートをパネル全面に貼ったことで、凸凹したアルミケースの、ぼろ隠しが出来ました。
LCD表面に保護シートが付いていますので、多少ボケていますが、ベランダや移動に持って行けるアナライザーが完成しました。
さっそく、ベランダに持ち込み、私のプリセットMTUの調整に使ってみました。 アナログメーターの応答が、やはり遅く、SWR最少にMTUを調整するとき、手持ちのCAA-500より慎重にやらないと、最少ポイントを通り過ぎてしまいます。 この辺は最初から判っていた事でしたが、気になります。 Microchipの有償版コンパイラーの説明によると、プロバージョンを使うと、少なくとも4倍以上の速さにオプチマイズできるとの事ですが、10万円以上もしますので、諦めました。
アンテナアナライザは屋外でつかいますので、直射日光の下に置かれる事が多々発生します。 この為、最初黒色でしたパネル面は現在赤色に変色してしまいました。
SWRカーブを取り、それをセーブ出来る機能は、例えば、このブログに結果を張り付ける為には便利です。
左のSWRカーブはベランダで、MTUを再調整したとき、データをセーブして置いたものを、後から、再表示させデジカメで撮ったものです。
PCに保存するほどではないけど、データが残るというのはいいですね。
ところで、左のグラフはアンテナチューナー直下で測定したSWR特性で最少SWR1.05くらいですが、これを22m長の8D2Vを経由したトランシーバー出力部分で再度測定すると、100KHzくらいの幅でSWR1.0となってしまいます。 これは同軸ケーブルによるロスによるSWR差として出てくるものですが、得られたカーブは不自然です。いくら同軸で減衰があるにせよ、100KHzの範囲でSWR1.0はなかろうと、ソフトの中での四捨五入や切り捨て処理に問題がないかチェックしました。 色々検討した結果、ソフトではなく、ハードの問題である事が判りました。
通常、OP-AMPには入力オフセットという誤差が有り、入力がゼロボルトでもこのオフセットの分だけ、出力がゼロになりません。 逆に、入力がオフセット電圧以下なら、出力は常にゼロとなります。 このICのバラツキによる入力オフセットの為、SWR用のDC電圧が少し出ているのに、出力がゼロになっていたものです。 これを補正する為、OP-AMPの入力にオフセット補正用のDC電圧を加え、これをキャンセルさせますが、今回使ったOP-AMPのオフセットの方向が+/-入力に対して逆になっていました。
今まで、マイナス入力端子にDCオフセットを印加していましたが、プラス入力端子にDCオフセットをかけて, 50Ωダミー抵抗の時、OP-AMPの出力をADが読んだ値を0010くらいにしておき、ソフトでADの出力が0010のとき、SWR1.0と定義する事により、自然なカーブが得られるようになりました。
また、目安にしかならないSWRのデジタル表示ですが、せっかく内部で小数点以下第2位まで計算していますので、これを表示させる事にしました。 実際のアンテナを接続した場合、SWR1.00の表示は出なくなりましたが、こちらの方が本物のような気がします。
LWの発振回路に使われているコンデンサC33は間違っていました。103Kではなく正しくは104Kでした。これを修正した結果、LWのカバー範囲は95KHzから530KHzとなりました。
最終的な各周波数の波形は以下のようになりました。
電池マークのバッテリーインジケーターは4.5Vでフル表示し、3Vまで電池の電圧に比例した残量が緑色で表示され、3Vから2.7Vまでは黄色で表示、2.7V以下では赤色になるよう設定しました。 この電源回路に使われている昇圧型のDC/DCは1.8Vでも動作しますが、さすがに2.7Vより下がると、電池の内部インピーダンスが急激に増大し、たちまち動作不能になります。 また、過去の記述には有りませんでしたが、CENTERキーを長押しするとオートパワーOFF機能を1分から20分まで1分刻みで設定できるようにしました。 もちろん、この機能をOFFする事もできます。
2016年8月11日
LWバンドをカバーする周波数帯域は、従来のアナライザーより便利に使える事が判りましたが、SWRグラフ表示のバンド幅が有限というのは、使い勝ってが悪い事が判りました。ここは、せめてセンター周波数の+/-30%くらいはカバーした方がいいようです。 これは、ソフトの変更のみで行えますので、スィープ時のバンド幅は 「1,2,4,6,10,20,40,60,100,200,400」のプリセット値としました。
そして最大の欠点は、LCDで描画したアナログメーターである事が理解できました。 このアナログメーターはすでに、LCDの1ピクセルの分解能で動作していますので、これより細かい動きは出来ません。 アンテナアナライザーでSWRを計ったり、LCの共振周波数を計る場合、指針が最小値を表示する周波数を知りたい事が多々発生します。 このような時、1ピクセルの分解能では、最小値の周波数を知る事は出来ませんでした。 この感覚はメカニカル方式アナログメーターにはとても及びません。 どんなに精度の悪いメカニカルメーターでも、最小値や最大値を探すのは、簡単にできます。
このアナライザーを製作するに当たり、SWRグラフィック表示とアナログメーター表示を兼用可能な液晶表示で、コメットやMFJのアナライザーより使いやすいアナライザーを目指してきました。 この手作り品は基板がユニバーサル基板なので、ケースサイズを小さくできませんでしたが、両面高密度基板を使えば、単3乾電池3本という電源を含めて、かなり小型のアナログ式アンテナアナライザーが出来ると考えました。 しかし、メカニカルメーターのフィーリングには勝てませんでした。
今更、アナログメーターに戻す気はありませんので、現在は、SWRを小数点以下2桁まで、Z(インピーダンス)を小数点以下1桁まで表示した数値を見ながら、LCDによるアナログメーターの欠点をカバーしています。 直感的には判りませんが、そこそこの探索は可能です。
LCD表示のアナログメーターは、Sメーターかタコメーターが一番合いそうです。 最近の車のスピードメーターやタコメーターはタイヤの回転数やエンジンの回転数をデジタルで検出して、そのデジタル値をベースにステッピングモーターを回して、指針を動かしているのだそうですが、これらは、今後インパネ内の表示量増大に伴い、LCDタイプが増加することでしょうね。
2018年11月
マイコンのソースコードを公開しようとしましたが、どれが最終で、どのようにコンパイルしたかも忘れてしまいました。 以下のふたつのソースファイルは多分まともにコンパイルできないと思います。
2022年5月
負荷オープン時の校正作業が行われなくなってしまいました。 原因を調査したところ、インピーダンス検出用のダイオードHSC285の逆方向抵抗が200Ωくらいしかなく、正常にDC電圧を得る事が出来ないのが原因でした。 このダイオードは劣化しやく、このアナライザーが完成してから、すでに6年以上経過していますので、しょうが無いという状態です。 補修用に手持ちしていた正常品に交換したら、インピーダンス表示は正常になりました。 バリキャップ電圧として14Vの電圧を一度リップルフィルターを通し、発振周波数がFM変調されるのを軽減しておりましたが、このリップルフィルターの劣化により、電圧降下が大きくなり、最大14Vくらいで有った、バリキャップ電圧が9Vくらいしか有りません。 その為、最高周波数が52MHzくらいしかなく、50MHz全帯域を測れない状態になっていました。 対策として、リップルフィルターを100Ωの抵抗に置き換えました。 結果、電圧は13.7Vくらいまで上昇し、最高周波数は64MHzくらいになりました。 リップルによるFM変調音は、リップルフィルターの時より大きいですが、我慢出来るレベルです。 また時々、AD変換データが間違う事がありました。 詳細を調べると、ADCのプログラム記述に間違いがありました。 今まで、どうしてまともに動いていたのが不思議です。 DATA処理マイコンのプログラムを修正しました。
ダイソーの単3アルカリ電池3本では、電池の消耗が早く、トータルON時間が30分くらいになると、数分間くらいしかONしないのに、急激に電圧が下がり、インジケーターが黄色になります。 しばらく放置して再度ONすると、バッテリーインジケーターは元の緑に変わりますが、次に黄色になるまでのON時間が短くなって行きます。 そこで、この電池をリチウムポリマー電池(LiPo Batt)に変更する事にしました。 電池はアマゾンで3.7V900mAh品を999円で見つけましたので、これをゲット。 また、LiPo電池の充電ICは7~8年前に買ってあったMCP73832Tです。
左上が、単3乾電池をLiPo電池に変更して実装したところ。 真ん中は、米粒大のICを基板に実装したところ。(黄色の円の中)。 右端が充電中を表示するインジケーターです。 充電時の定電流は300mAに設定しました。 充電満了になると、LEDが消灯しますので、そこで、外部DC電源のプラグを抜く事にします。 LCD上のバッテリーインジケーターが黄色になるのが3V以下で、2.7Vで赤に変わりますので、再充電は黄色のマークが出たら行う事にします。 LiPo電池の取り扱い説明によると、推奨される使い方は、フル充電した後、終止電圧になるまで使い続け、終止電圧になったら、再度フル充電を行い、充電回数をなるべく多くしない事のようですので、充電しながらの使用は出来るだけ避けるようにする事にします。 この電池の終止電圧は、2.5Vですが、安全を見て3Vを切ったら再充電する事にしました。 (使用中でも充電できますが、その場合の充電電流は最大でも50mAしかありません)
このアナライザーにはPICKIT3を接続する為のコネクターが2個ついており、どちらがDATA用でどちらがLCD用か、毎回迷いますので、コネクタの位置にマーキングを入れました。
修正済みプログラム AA50SD_data_1100.cをダウンロード
修正済み配線図 AA50DATA220527.pdfをダウンロード
ついでに変色したパネルも張り替えました。張り替え前と後を記録に残します。