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2014年11月12日 (水)

アンテナアナライザーと外来電波(夜になるとSWRが上がる)

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

アンテナアナライザーという便利な道具を常用していると、思わぬトラブルを経験します。 7MHzのダイポールを昼間、7050KHzでSWR1.1に調整しておき、夜、再度確認するとSWR1.8くらいまで悪化していました。しかも、かなり指針が揺れます。 暗いのでアンテナの再調整は翌朝行うこととし、翌朝、再度SWRを確認すると1.1になっており問題なしです。 アンテナの状態が晴れと雨では違っても、昼と夜で変化するという話は聞いた事は有りません。

原因は、またも「北京放送」でした。

アンテナアナライザーをアンテナに接続した状態は、回路的に見ると、同調回路のない鉱石ラジオそのものです。強力な電波がアンテナから侵入すると、アナライザーの発振出力と同じくらいかそれよりも大きな信号がインピーダンスやSWR検出用ダイオードに加わります。 この為、SWRやインピーダンスが大きく表示されてしまいます。 特に7MHz帯の北京放送はハムバンドに近いだけでなく、鉱石ラジオがガンガンなるほど強力です。 7MHzに同調したダイポールですから、其処らへんに張ったロングワイヤーなどに比べたら、はるかに大きな信号で受信できるのでしょう。

また、なにも7MHzの北京放送だけではなく、中波放送が1.8MHzのアンテナ調整に邪魔になるとか、FM放送局が144MHzのアンテナに混入し測定不能になるとか、すぐ近くで誰かが電波を送信したとか、アンテナアナライザーの使用を困難にしている現象が世界中で起きているようです。

この問題は、ブリッジ方式のアンテナアナライザーにとって宿命的であり、妨害を与える電波を止めるしか有りません。 しかし、放送局の電波は止められませんので、アナライザー内部の発振器の出力を上げ、検波回路の感度を悪くし、外来電波の影響を少しでも緩和する手段と、妨害電波用のトラップ回路をアナライザーとアンテナの間に入れるくらいの対策案しか有りません。

トラップの場合、FM放送がHFアンテナの調整時邪魔をする場合、効果が有っても、7MHzの北京放送や、1.8MHzの中波放送はトラップを入れただけで、測定不能なほどSWRは異なってしまいます。

一方、発振出力を上げる案は、電波法という法律が前に立ちはだかります。 アンテナアナライザーを送信機として申請し許可をとればいくらでも出力をアップできますが、使用可能な周波数範囲はハムバンドに限定されます。 アンテナアナライザーの最大の強みはハムバンド以外も測定できるという事ですから、発射される電波は許可を要しない著しく微弱な電波の範囲でなければなりません。

日本の電波法では、この許可を要しない電波の電界強度を以下のように定めています。

電波の発射点から3mの距離において

322MHz以下 500μV/m以下

322MHz - 10GHz 35μV/m以下

この限度値はサービスエリアが半径20~30mくらいの無線局を想定して設定されている模様で、例えば、半径1500mくらいの地点でも、明瞭に受信できるような送信設備の場合、あきらかに法令違反になる訳です。 ただしこの規定にかかわらず、測定器としての発振器に定義される装置には後述のごとく出力の規定が有りません。

Aapowertest

そこで、代表的なアンテナアナライザーの出力レベルを調べてみました。調べたのは私ではなくQSTの執筆者です。また、各アナライザーの取説には、その出力レベルを明記してありますが、発振器の出力レベルだったり、アンテナコネクター端子の解放電圧だったり、50Ωで終端した場合だったりしますので、左の等価回路に示すようにスペアナによる50Ω終端時のレベルとして測定されていました。

Aapowerlist

電波法施行規則の第6条で、免許を要しない無線局として、「標準電界発生器、ヘテロダイン周波数計その他の測定用小型発信器」と定義され、この小型発信器の出力についての制限は有りません。 無線局は送信機とアンテナで構成されますので、アンテナアナライザでアンテナの測定をする事自体は違法ではありませんが、すでに行われている無線業務に妨害を与えてはいけません。 空中に放射される電波は、アンテナの形態で大きく変わります。 QRPPを実践されている方なら10mWもあればかなり遠方と交信できる事は当たり前ですから、パワーの大きいアナライザーの場合、テストするアンテナや周波数は十分注意が必要でしょうね。

しかも、アナライザの出力を大きくしたとしても、CAA-500とFG-01の電界強度換算値は18dB程度しかありません。 短波帯のQSBの山谷の差、平均40dBなどに比べたら、ほとんど効果は期待できない状態です。

外来電波によりSWRを正確に測れない場合、許可を受けた送信機とSWR計で測定するのが一番のようです。周波数は許可を受けた範囲に限られますが、出力は北京放送や中波放送に絶対に負けないレベルまで上げる事ができます。

アナライザーの機種が変わったらSWR値が変わったとか、時間や季節でSWRが変わるなどの症状が確認されましたら、外来電波の影響を最初に疑ったほうが解決が速くなることでしょう。

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